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睡眠障害(ナルコレプシー除く)

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-26
三島和夫 (国立精神・神経医療研究センター精神生理研究部部長)
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  • ■疾患メモ

    睡眠障害(sleep disorder)とは,睡眠の異常により社会生活機能の障害(QOL障害)が生じる病態の総称である。

    睡眠の異常には,①睡眠の質や量,出現パターンの異常(不眠,リズム障害など),②覚醒機能の異常(過眠),③睡眠中の異常な精神身体現象(無呼吸,異常行動,不随意的な筋活動,自律神経活動など)がある場合,に大別される。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    睡眠障害国際分類(The International Classification of Sleep Disorders-3rd edition:ICSD-3,2014)1)では,症状や病態から睡眠障害は大きく7群に大別される(表1)。以下に,精神科診療でしばしば遭遇する各群の代表的疾患について症状をまとめた。

    23_15_睡眠障害(ナルコレプシー除く)

    〈不眠症〉

    不眠症状(入眠困難,中途覚醒,早朝覚醒,熟眠感欠如)のために日中の機能障害が認められる。日中の機能障害には,倦怠感,集中力・注意・記憶の障害,抑うつ気分や焦燥感,意欲低下,眠気,能率低下やミス,頭痛,消化器症状,睡眠に関する不安,などがある。

    〈閉塞性睡眠時無呼吸障害〉

    睡眠中に咽頭・喉頭周囲の骨格筋の弛緩により気道が閉塞し,夜間の激しいいびきや換気停止による血中酸素分圧の低下,それに引き続く覚醒反応および換気回復を頻繁に繰り返す。睡眠が頻繁に中断するため,不眠のみならず日中の過眠を呈する。

    〈中枢性過眠症群(ナルコレプシー,特発性過眠症など)〉

    「§23-16」参照

    〈睡眠・覚醒相後退障害〉

    体内時計の調節異常のため睡眠時間帯が大幅に遅れた状態のまま固定する。典型的には午前3~5時以降でないと入眠できず,午前9~11時以降でないと覚醒できない。入眠困難型の不眠症と誤診されることが少なくない。

    〈レム睡眠行動障害〉

    レム睡眠中は抗重力筋は弛緩するが,本症ではこの機能が障害されるため,夢体験と一致した大声の寝言や粗大な体動が出現する。せん妄と異なり,症状出現時に覚醒刺激を与えると速やかに覚醒する。

    〈レストレスレッグス症候群〉

    夕方から夜間に出現もしくは増悪する下肢や上肢に生じるむずむず,電撃痛などと表現される異常感覚のため不眠に陥る。下肢や上肢を動かしたくなる強い衝動があり,実際に動かすことで異常感覚が軽減する。

    【検査所見】

    終夜睡眠ポリグラフ検査(polysomnography:PSG):睡眠中の脳波,呼吸,四肢および顎の骨格筋活動,眼球運動(レム睡眠とノンレム睡眠の識別),心電図,酸素飽和度,胸壁の運動,腹壁の運動などを記録することで,睡眠深度の経時的推移,睡眠の質と量の異常,睡眠に随伴した異常な精神・身体徴候を同定する検査方法である。

    反復入眠潜時検査(multiple sleep latency test:MSLT):前夜の終夜睡眠ポリグラフ検査終了後の翌朝から,日中2時間おきに,4回または5回にわたり,脳波,眼球運動,筋電図を繰り返し測定する(各20分)。各セッションの睡眠潜時,レム睡眠潜時を検出することで,過眠症状の有無やナルコレプシーの診断が可能になる。

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