著: | 小菅 雅美(横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センター内科客員教授) |
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判型: | A4判 |
頁数: | 120頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2020年03月25日 |
ISBN: | 978-4-7849-5774-3 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
“心電図 活かすも殺すも 読み手次第”
循環救急疾患では,迅速かつ的確な診断・治療が求められます。各種画像診断が飛躍的に進歩した現在においても,心電図は簡便かつ非侵襲的に行うことができ,その場ですぐに結果が得られるため,まず最初に行われる基本となる検査です。
私は循環器内科に入局し,すぐに救命救急センターCCU勤務となりました。けれども当時の自分の心電図の知識と言えば“心筋梗塞は,ST上昇・異常Q波”程度でした。実臨床では,学生時代に学んだ教科書的な知識では到底太刀打ちできないことを痛感しました。かといって日常診療で役立つ心電図の本があるかといえば,探してもありませんでした。けれども何事も人に教えてもらうものではなく,自分で勉強するものだと気がついたのです。新入医局員だった私の仕事は,昼夜を問わず緊急心臓カテーテル検査のときの外回り(カテーテル治療には携わらずに患者さんの症状やバイタルサインをチェックしたり心電図を記録する役)でした。急性心筋梗塞のときの緊急心臓カテーテル検査は,冠動脈病変と心電図所見をリアルタイムに評価でき,心電図を勉強する絶好の機会でした。「自分で心電図を勉強しよう」と思い,入院した急性心筋梗塞患者さんの冠動脈造影所見と心電図を手書きでスケッチし,両者を対比していきました。初めは何も分からず手探りの状態でしたが,症例を積み重ねるにつれ心電図と冠動脈造影所見との関係について自分なりに新しい発見があり,それを学会や論文で発表してきました。
この本は,これまで私が症例から学んだ臨床心電図学の集大成です。心電図の見方や考え方は自己流なので,心電図を専門とされる先生からはご批判を受けるかもしれません。けれども“心電図を臨床に活かす”という観点からは何かしら役立つのではないかと思っております。
心電図から得られる情報は限りなく測り知れません。心電図を活かすも殺すも読み手次第です。本書が読者の皆さんの心電図に対する意識を変え,今後の診療の援けになることを心より願っております。
最後に本書に掲載されている心電図を中心とした資料は,すべて横浜市立大学附属市民総合医療センターの救命救急センター,心臓血管センターのものです。昼夜を問わず循環救急診療に携わっているスタッフならびに御指導を頂いた木村一雄教授に,この場を借りて厚く御礼申し上げます。
2020年2月
小菅雅美(横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センター内科客員教授)