編著: | 佐藤幸人(兵庫県立尼崎総合医療センター循環器内科長) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 294頁 |
装丁: | 2色部分カラー |
発行日: | 2021年03月16日 |
ISBN: | 978-4-7849-0392-4 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると,本書の全ページを閲覧できます) |
心不全関連ガイドラインに掲載されている多くの記述の中から,プライマリケアと多職種介入チーム医療の観点より,ジェネラリストに必要な診療指針として役立つ部分だけをわかりやすく解説。
第1章では心不全患者に薬物療法を行う際に必要な病態の知識について,第2章ではプライマリケアの観点から心不全の診断に必要な知識について,第3章では心不全治療について,まずはどのような薬物治療を行えばよいか,さらに必要に応じてどのような治療を追加するか,の2つにわけて解説。第4章では急性心不全の治療(薬物療法をメインとした診療のポイント),第5章では植込型補助人工心臓や心臓移植の状況と今後の展望,最後の第6章では,心不全チーム医療の概念と,患者の指導・管理の実際,低栄養,緩和ケア,在宅への橋渡しについて解説する。
1章 心不全の疫学データの読み方・考え方
1 代償機転の交感神経系の働きが心不全を悪化させる
2 代償機転のレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の働きが心不全を悪化させる
3 代償機転のバソプレシン系の働きが心不全を悪化させる
4 ナトリウム利尿ペプチド系はレニンアンジオテンシン系,交感神経系に拮抗する
2章 心不全の診断は? 症状,胸部X線検査,BNP,心エコーを組み合わせる!
1 心不全の自覚症状・他覚症状
2 胸部X線検査で何を見る?
3 BNP・NT-BNPで何がわかる?
4 心エコーで診断する
3章 慢性心不全の治療は?
A まずは薬物治療を!
1 予後改善薬─ACE阻害薬,β遮断薬の使い方
2 アルドステロン拮抗薬はどのようなときに追加するか?
3 症状改善薬─利尿薬の使い方
4 ジギタリス─最近の考え方
5 心房細動合併時の考え方
6 合併する高血圧の治療はどうする?
7 新しい治療薬 イバブラジンとLCZ696
B 追加を検討する治療
1 アブレーション,CRT,CRT-D
2 心臓リハビリテーション
3 ASVの使い方
4 カテーテルによる僧帽弁閉鎖不全の治療
5 カテーテルによる左心耳閉鎖術
4章 急性心不全の治療は?
1 クリニカルシナリオによる急性心不全治療
2 s─硝酸薬,カルペリチドの使い方
3 点滴強心薬─ドパミン,ドブタミンの使い方
4 補助循環(メカニカルサポート)
5章 心不全の特殊な治療とは?
1 植込み型補助人工心臓─補助人工心臓
2 心臓移植
6章 心不全の治療と管理はチーム医療で!
A 概論
1 心不全のチーム医療とは?
2 患者教育の重要性
3 多職種心不全カンファレンスの重要性
4 心不全のチーム医療における患者手帳の重要性
B 日常生活における指導の実際
1 服薬アドヒアランスの管理
2 生活指導の実際
3 フレイルとその予防
4 禁煙の重要性
5 安全な入浴の条件は?
C 応用編
1 心不全にみられる低栄養とは
①総論
②栄養介入方法_慢性心不全
③栄養介入方法─急性心不全
2 緩和ケア
①総論
②薬剤師の視点からの検討
③緩和ケア推進のための体制構築
3 心不全の在宅ケアとは?
①総論
②ソーシャルワーカーの立場から
③在宅看護の観点から
④社会啓発の必要性
心不全の診療について, ジェネラリストに必要な指針を読みやすくまとめた書籍『ゼッタイ答えがみつかる心不全』の作成を依頼されたのは2013年,早くも8年が経過しました。心不全患者が増加し,社会的問題となる様相を呈しつつあった時代で,実践的な内容を文章にまとめるには膨大な時間を割かなければならないことも多く,診療の第一線に立つ先生方とメディカルスタッフの皆様に,恐縮しながら原稿の執筆を依頼したことを覚えています。
その後,心不全患者はますます高齢化し,患者の家庭環境・社会環境の整備が,医学的な治療と同じように重要であることがわかってきました。そうした背景から,2016年,日本脳卒中学会,日本循環器学会など関連21学会は連名で,「脳卒中と循環器病克服5ヵ年計画」を発表し,今後の循環器疾患は,医師単独ではなく,急性期から慢性期まで一貫した多職種チームによる治療管理が必要であると提唱しました。2019年には「脳卒中・循環器病対策基本法」が施行され,今後は国の基本計画を基に,各都道府県が対策推進計画を策定した上で,健康寿命の延伸と循環器疾患の死亡率減少を目指します。
そのような社会的状況の中,前書を改訂することになりました。8年の間に新たに登場した治療薬,治療法のほか,栄養指導,緩和ケア,在宅医療に関する解説を充実させた内容となっています。先生方にはお忙しい中,また新型コロナウイルス感染拡大による医療崩壊が叫ばれる中ご執筆頂き,本当にありがとうございました。この場を借りて深謝申し上げます。
今後は地域包括ケアシステムが推進され,心不全の在宅医療提供の増加が予想されることから,医療とケアに関わる多職種の連携がさらに求められます。本書は,医療だけでなく,ケアに関わる職種の皆様にも読んで頂ける内容となっています。心不全の概念を広く理解して頂く入門書として,さらに日常臨床での助けとして,読者の皆様のお手元で役立つことを願うとともに,患者さんとその家族が,心不全という難治性・進行性・致死性の病気と闘いながらも,より良い人生を過ごされることを心より願っています。