著: | 大石 充(鹿児島大学心臓血管・高血圧内科学教授) |
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判型: | A5判 |
頁数: | 168頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2021年03月10日 |
ISBN: | 978-4-7849-5990-7 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると,本書の全ページを閲覧できます) |
1 そもそも血圧と高血圧って?
1.1 “血圧”と“高血圧”の歴史
1.2 高血圧はどのようにして決められたのか?
1.3 どの血圧が本当の血圧?
トピックス(1) 血圧手帳は信用に値するか?
1.4 正常血圧とは?
1.5 低血圧とは?
2 血圧をどこまで下げるのか?
2.1 降圧目標はいくつ?
A 高血圧治療ガイドライン2019
B 各ガイドラインの比較
2.2 PCI術者やアブレーション術者こそ降圧療法を熟知せよ!
2.3 Hypertension ParadoxとClinical Inertia
2.4 高齢者は降圧しなくてもいい??
3 高血圧の病態
3.1 血圧オーム(Ω)の法則
3.2 体液貯留型
A 夜間高血圧と体液貯留
トピックス(2) 日本人や黒人はなぜ食塩感受性なのか?
B インスリンと体液貯留
C 高齢者の低ナトリウム血症
トピックス(3) ヒトは何g食塩を摂取することができるのか?
3.3 血管抵抗増加型
A 血圧変動性と血管リモデリング
B 血管リモデリングとRA系
3.4 高血圧の発症・進展経過
トピックス(4) なぜ,ヤノマミ族は血圧が上がらないのか?
3.5 高齢者とHFpEF
3.6 降圧モデルとしての糖尿病合併高血圧
4 薬理作用をおさえた降圧薬の使い方
4.1 カルシウム拮抗薬(CCB)
A 3つのCaチャネルとCaチャネルダブルブロック
B 一酸化窒素(NO)を使った降圧
C CCBは副作用がない薬か?
トピックス(5) CCBは夜間頻尿誘導薬?
D 大石流! CCBの使い分け
4.2 利尿薬 66
A 利尿の違い ― Na利尿と水利尿
トピックス(6) 利尿薬は夜間頻尿治療薬?
B マクラデンサで考える利尿薬の使い分け
トピックス(7) 高山病対策に活躍する降圧薬
C 利尿薬は副作用が多い薬?
トピックス(8) 生活習慣病コントロールの基本は断捨離
D サイアザイド系利尿薬を飲むと頻尿になる??
トピックス(9) 夜間頻尿で降圧薬が選択できる??
4.3 ARB/ACE阻害薬
A RA系とは
トピックス RA系は狩りをするためのシステム?
B COVID-19とRA系
C 何を目的としてRA系阻害薬を使うのか?
D 血管組織からみたARBとACE阻害薬の使い分け
E 腎機能障害時のARB/ACE阻害薬の使い方
F 大石流! ARBの使い分け
4.4 β遮断薬
A β遮断薬はなぜ第一選択薬とならないのか?
B 脂溶性/水溶性とβ選択性/α遮断作用
トピックス β遮断薬は血圧を変動させる
C β遮断薬を使いたくなる人
4.5 α遮断薬
4.6 アルドステロン拮抗薬
A アルドステロン作用のメカニズム
B MR関連高血圧
C アルドステロン拮抗薬を使いたくなる人
4.7 その他の降圧薬
A 腎保護薬としての直接レニン阻害薬(DRI)
B 将来性を感じるSGLT2阻害薬
5 症例
病態プロファイリングの実例
6 難治性高血圧
6.1 難 治性高血圧専門外来の経験 ― 難 治性高血圧は存在するのか?
6.2 悪性高血圧
6.3 知っておきたい二次性高血圧
7 特殊な高血圧(女性,子供,透析)
7.1 若い女性の高血圧
A 生活習慣病の若年化で増加した妊娠適齢期本態性高血圧
B 授乳期高血圧
7.2 小児の高血圧
7.3 透析患者の高血圧
8 生活指導とアドヒアランス
8.1 食事療法
8.2 運動療法
8.3 アドヒアランス
9 私の失敗事例
9.1 隠れ認知症にだまされた一例
9.2 CPAPをはねのける睡眠時無呼吸
9.3 漢方は副作用のない薬ではない!
10 Hypertension ParadoxとClinical Inertiaに陥らないための治療計画
10.1 降圧療法のPDCAサイクル
10.2 自分なりのクリニカルパスを
“45”
これは,高血圧治療における降圧目標達成率。たくさんの優秀な降圧薬を使用することができるのに,なぜ半数以上の高血圧患者さんの血圧コントロールができないのだろうか?
「自分のお気に入りの降圧薬ばかり惰性で使っていないか?」「講演会で言われることを鵜呑みにして漫然と使用していないか?」そんな疑問を持ちながら, 平成28年から29年にかけて鹿児島市内の熱心なかかりつけ医の先生方を対象に高血圧治療のノウハウを伝授する『鹿児島高血圧道場』を計4回開催した。高血圧の病態から特殊高血圧の管理まで,私の持っている高血圧診療のノウハウすべてを皆様にご提供させていただいた。4回全部に出席してくださったかかりつけ医の先生方には,私製の「鹿児島高血圧マイスター」の賞状を送らせていただいた。
この時の内容を参考にして,新しいガイドラインに準拠しながら,高血圧治療のハウツーを作成してみたものが『3か月でほぼ100%降圧する高血圧道場』である。ガイドラインや高血圧に関する本を見てみても,「どのような患者さんの血圧をどこまで下げたらいいのか?」という記述はあっても,「どのような患者さんに対してどのようにして血圧を下げたらいいのか?」という記事を見たことがほとんどない。私は,若い頃は心臓カテーテルを専門とした循環器内科医であったが,医局の専門性などから虚血性心疾患から高血圧へと専門をシフトせざるをえなかった。内心,「降圧薬を飲めば済むような病気を専門にして何が楽しいんだろう」と悪態をついていたが,実際,専門的に診療をしてみると,降圧薬の組み合わせを変えるだけで劇的に血圧を下げられることを体験して,パズル感覚で楽しい思いもした。さらに「3か月でどんな高血圧も正常化します。」と大見得を切って,難治性高血圧専門外来を前任の大阪大学医学部附属病院老年・高血圧内科で開設した。最後まで下げられなかった人はいなかったが,3か月以上かかってしまった人はこの本の中で失敗談として掲載させてもらった。この外来を通じて,降圧利尿薬の使い方と原発性アルドステロン症がキーだなと思っていたので,講演の座長をしていただいた折に島本和明元札幌医科大学学長に話をしたところ,「そうなんだよ,大石君。難治性高血圧なんていないよ。」と笑って大きく同意をしていただいて,我が意を得たりと大変感激したことを覚えている。さて,これらの経験を通じて得たノウハウをこの本にすべて詰め込んだ。私の独断と偏見や,妄想に近い内容まで入っているが,すべて私が患者さんを通じて得た“知識”と“手ごたえ”から導き出したものである。これを読んでくださった皆様が楽しんで血圧管理をしていただければ幸いである。
下記の箇所に誤りがございました。謹んでお詫びし訂正いたします。