編集: | 斎藤 厚(日本赤十字社長崎原爆諫早病院院長) |
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判型: | A5判 |
頁数: | 312頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2007年03月05日 |
ISBN: | 978-4-7849-5419-3 |
版数: | 第1版 |
付録: | - |
レジオネラ感染症の基礎から臨床までを網羅した一冊です。迅速診断法の普及により、決して稀な疾患とは言えなくなったレジオネラ肺炎を中心に、もし患者を見つけた時にどう対処すべきかを詳述しています。四類感染症としての届出義務、ポンティアック熱、感染源と予防対策などをあらゆる角度から解説し、さらに致死率の高いレジオネラ肺炎に対する最新の治療法を示しています。
レジオネラ感染症の中では、特にレジオネラ肺炎が臨床上きわめて重要であるが、その診断法、治療法あるいは感染経路にわが国と欧米との間にかなりの相違がみられていた。すなわち、わが国における確定診断による症例数の少なさ、病因診断法普及の不十分さ、感染経路の相違、レジオネラ肺炎治療保険適用薬剤がないこと、あるいは症例数の少なさゆえの臨床医の認識度の低さなどである。
欧米のレジオネラ肺炎がクーリングタワーを主たる感染源としていたのに比し、わが国の症例は国民的嗜好が強い温泉などの入浴施設、特に循環式浴槽(24時間風呂、社会福祉施設の浴場、近代施設の大型温泉など)からの感染例が最も多く、そこに存在する原因菌種の血清型は前者が血清型1が圧倒的に多いのに比べ、血清型3、5、6で90%以上を占め大きな相違がみられている。これらの血清型の相違が実際の感染症例の菌型の頻度とは合致していないという問題点は残るものの、現在ではわが国での循環式浴槽のレジオネラ対策は十分行われるようになったこと、欧米と同様の迅速診断法の普及(ただし、血清型3、5、6は診断困難)、治療薬剤の保険適用、感染症法における第四類(全数届出)感染症による臨床医の認知度の上昇などなど多くの点において改善がみられてきた。
レジオネラ肺炎の本邦第一症例を報告してから既に25年を経たわけであるが、これまで本症に関する単行本が皆無であったこと、レジオネラ感染症の基礎と臨床に関してわが国も世界的なレベルに達していると考えられたので、ここに一冊の本としてまとめることとなった。
本書はレジオネラ研究の第一人者である執筆者を網羅したものであるので、臨床研修医をはじめとする日常臨床医はもちろんのことレジオネラ研究の入門書としても活用頂けるものと自負している。本書が広く活用され致死率の高いレジオネラ肺炎罹患者が一人でも多く救われることになれば、執筆者一同の喜び、これに優るものはない。
平成19年1月
編者 斎藤 厚