著: | 作田 学(杏林大学医学部神経内科客員教授) |
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判型: | A5判 |
頁数: | 232頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2008年01月15日 |
ISBN: | 978-4-7849-4240-4 |
版数: | 第2版 |
付録: | - |
日本人の多くが有しているといわれている頭痛は,プライマリ・ケア医が診る機会が多いものです。本書は,頭痛,肩こりのメカニズムから,シャルドネ頭痛やアイスクリーム頭痛に至るまで豊富な症例を呈示しており,日常診療で出会うあらゆるパターンの頭痛に対処すべく書かれています。最新の頭痛国際分類第2版(ICHD-II)にも対応しています。頭痛の診療にはこの1冊で。
診療科: | 内科 | 神経内科 |
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シリーズ: | Primary care note シリーズ |
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1 頭痛の分類と診断基準
1 頭痛の分類と疫学
1.頭痛の分類
2.頭痛の疫学
3.頭痛を主訴に来院した患者の最終診断
2 問診表と頭痛ノートを利用した頭痛の診断
1.頭痛の問診
2.頭痛の問診表
頭痛の問診表の結果
3.頭痛ノートとその使い方
3 頭痛の問診と診断まで
4 神経学的検査
5 頭痛の補助検査
6 診断の手順(心因性頭痛・内因性頭痛・外因性頭痛の見極め )
2 緊張型頭痛(後頸筋の筋収縮を伴うもの)
1 緊張型頭痛の診断基準
2 緊張型頭痛のメカニズム
1.痛みの起こるメカニズム
2.なぜ緊張型頭痛が起こるのか
3.なぜ頭痛を起こしやすい人がいるのか
4.頭痛患者の体型
5.頸椎の問題
6.低血圧や貧血
7.ストレス
8.随意的なうつむき姿勢と無意識のうつむき姿勢の違い
9.枕の問題
3 緊張型頭痛の治療
1.うつむき姿勢をとらない
2.筋力トレーニング
3.低血圧や貧血の治療
4.ストレスに対する治療
5.緊張型頭痛の薬物治療
1)筋弛緩薬
2)鎮痛薬
◆column 頭痛と文豪(1)樋口一葉(1872?1896)
3 緊張型頭痛(後頸筋の筋収縮を伴わないもの)
1 心因性頭痛
心因性頭痛の薬物療法
2 仮面うつ病に伴う頭痛
1.仮面うつ病の治療
2.仮面うつ病に伴う頭痛の薬物療法
4 慢性習慣性頭痛,薬剤性頭痛
1 慢性習慣性頭痛
1.定 義
2.分 類
2 変形した片頭痛
1.定 義
2.分 類
3.臨床症状と治療
3 慢性緊張型頭痛
1.定義 (ICHD-II)
2.臨床症状と治療
4 新規発症持続性連日性頭痛
1.定義 (ICHD-II)
2.臨床症状と治療
5 持続性片側頭痛
1.定義(ICHD-II)
2.臨床症状と治療
5 片頭痛
1 片頭痛のメカニズム
1.血管説
2.神経説
3.三叉神経血管説
4.著者の考える片頭痛のメカニズム
5.片頭痛に伴う肩こり
2 頭痛を伴わない片頭痛
3 片頭痛の治療
1.誘発因子を除く
2.食餌療法
3.薬物療法
1)片頭痛予防薬としてのlomerizine hydrochloride(ミグシス,テラナス)
2)片頭痛頓挫薬としてのsumatriptan succinate(イミグラン)など
3)予防薬か頓挫薬か
◆column 頭痛と文豪(2)芥川龍之介(1892?1927)
6 群発頭痛と三叉神経・自律神経性頭痛
1 群発頭痛
1.分 類
2.リスクファクター
3.メカニズム
4.なぜ自律神経症状が起きるのか
5.鑑別診断
6.治 療
2 発作性片側頭痛
1.発作性片側頭痛
2.慢性発作性片側頭痛
3 反復性発作性片側頭痛
4 結膜充血および流涙を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作
5 持続性片側頭痛
6 LASH
7 睡眠時頭痛
7 一次性労作性頭痛
1 一次性労作性頭痛
2 急性緊張型頭痛
3 高血圧に伴う頭痛
4 脳圧亢進に伴う頭痛
5 動脈の拡張,無酸素脳症に伴う頭痛
6 元来有する頭痛発作の誘発
8 てんかん性頭痛
1 てんかん性頭痛とは
2 てんかん性頭痛の症状と機序
3 てんかん性頭痛の症例
9 さまざまな頭痛
1 アイスクリーム頭痛
2 高山病
3 潜水病
4 香水頭痛
5 チャイニーズレストラン症候群,グルタミン酸頭痛
6 シャルドネ頭痛,赤ワイン頭痛
7 二日酔
8 せんべいと頭痛
9 シャンプーと頭痛
10 美容室―Wallenberg症候群
11 不思議の国のアリス症候群
12 ファーストクラス症候群
10 器質性頭痛
1 くも膜下出血
喫煙とくも膜下出血
2 慢性硬膜下血腫
3 脳腫瘍
4 髄膜炎
5 急性副鼻腔炎
6 側頭動脈炎
7 低髄液圧症候群
8 特発性頭蓋内圧亢進症
9 帯状疱疹,三叉神経痛
10 脳静脈血栓症
11 脳梗塞
12 脳内出血
13 脳梁欠損症
14 その他
1.眼鏡の痛み
2.歯性頭痛
3.眼科的疾患の頭痛
11 前頭部・眼窩領域の痛み
1 前頭部・眼窩領域の痛み
1.疾患の種類
2.自律神経症状を伴わないもの
1)心因性頭痛
2)てんかん性頭痛
3.自律神経症状を伴うもの
1)反復性発作性片側頭痛
2)持続性片側頭痛
12 現代人と頭痛
1 日本人の頭痛は増えているか
1.頭痛の統計
2.頭痛の傾向
2 頭痛増加の要因
1.体型と姿勢
2.低血圧や貧血など
3.ストレス
4.片頭痛について
13 環境,ストレスと頭痛
1 高地・低酸素,温暖前線
1.高地・低酸素
2.温暖前線
2 騒音・悪臭,ストレス,生体の防御反応
1.騒音や強いにおい
2.ストレス
3.生体の防御反応
3 難治性頭痛
14 肩こりのメカニズムと治療
1 阻血性筋収縮のメカニズム
2 頭の重み
3 その他の要因
4 肩こりを防ぐには
コラム
1)エジプトの頭痛の治療
2)ギリシャ医学(アルクマイオンの思想)
3)ギリシャの流行病(ツキディデスの記載 紀元前430年頃)
4)ローマ時代 ガレノスの施術(160年頃)
5)日本の古い医学と頭痛
6)ヒトラーの頭痛
本書は幸いにしてご好評を得、改訂版を出すことになった。第2版では、頭痛の国際分類第二版(ICHD-II)の邦訳に用語を統一した。
初版においては、「頭痛診療に自信が出る。コンパクトにわかりやすくよくまとまっています。緊張性頭痛、片頭痛はもちろんくも膜下出血などの危ない頭痛からワインや香水による頭痛まで臨床的に広くカバーされています。著者らの作成した頭痛の問診表や頭痛ノートはすぐに診療に使えそうです。」(Amazon)というように好意的なお勧めの言葉をいただいた。実際に、本書は辞書的に引く本ではない。まずは一度ぜひ通読をしていただきたい。頭痛を起こす疾患には、どういうものがあるかを把握しなければ、診断はできないからである。これはおおよそが分かれば良い。難しい疾患は大体あそこに書いてあったということが分かれば、診断が容易になる。そうすれば、頭痛の診断と治療が自家薬籠中のものとなろう。
第2版においては特に、心因性あるいはうつ病による頭痛に力を入れて改訂した。というのも、これらは見分け方を知っていれば容易に見当がつくが、知らないでいると全く分からずに終わってしまうからである。本書を読んでいただければ、いかに容易に診断できるかが分かるだろう。またそれとともに、間違いやすいピットフォールがすぐそこに存在することも忘れてはならない。
ICHD-IIは実に素晴らしい体系である。これを頭に置けば、たいていの頭痛診断はスムーズに行うことができよう。ところが、ICHD-IIに未だ取り入れられていないものも数多くある。その1つがてんかんに伴う頭痛である。全身痙攣のあとに強い頭痛を残すことは有名であるが、これとは別にてんかんの症状として頭痛が起こることはほとんど注目されていない。これも特徴をつかめば、容易に診断が可能となる。てんかんの経過を観察する上でもこの頭痛を知っておくことで、治療がうまくいっているかどうかが容易に分かるだろう。
また、臨床家にあまり知られていないことに、圧痛点と筋膜痛、それに頭痛との関係がある。たとえば、胸鎖乳突筋の胸骨部の圧痛点からは後頭部、さらに頭頂部あるいは眼窩周囲への頭痛、鎖骨部の圧痛点からは外耳の前後、さらに前額部へ放散する頭痛を生じる。このように筋ごとに異なる頭痛・顔面痛・頸部痛を放散痛として生じうるが、この関係について詳しく述べるには紙数の関係で不可能であった。いずれまた機会があれば稿を改めたい。
頭痛は、簡単なように見えて、実に奥が深い疾患である。本書でその面白さの一端なりとお伝えできれば、望外の喜びである。
2007年12月吉日 作田 学
頭痛の治療ほど簡単なものはない。著者が神経内科を始めた最初にそう思ったことがある。患者さんに鎮痛薬と精神安定薬、あるいは麦角アルカロイドを投与すれば、慢性頭痛の大部分は軽快し、少なくとも苦情を言う人はいなかった。今から30年前のことである。ところがそれは全くの誤解であった。つまり医師にかかって症状がとれなければ、その医師のもとには二度と訪れない人が多いのだ。なかには精神安定薬でフラフラになった人もあっただろう。鎮痛薬の副作用が出た人もいたに違いない。そういうフィードバック情報はめったに得られるものではない。それにも増してこれは対症療法に過ぎなかった。つまり、なぜ頭痛が起こるのかという点に関して著者は説明すべきものをほとんどもっていなかった。10年前に頭痛患者さんのアンケートをとり、また驚かされることがあった。片頭痛の90%の人が医療施設を訪れず、したがってご自分の病気を正確に知らないでいるのだ。片頭痛は日本の700?800万人が有していると推察されている。それにもかかわらずご自分の病気を知らないとは。この本に書いたことの大部分は患者さんが教えてくれたことである。Wolffらが60年前に行ったように、症状を詳細にお聞きし、観察、検査ならびに治療を一人一人の患者さんに対して行い、その結果明らかになったことをまとめたものである。といっても、まだ誤っているところがあるかもしれない。19世紀の医者は蛭に血を吸わせることで病気が治ると本気で信じていた。理論を過度に信用し、患者さんからのフィードバックを軽視していたのである。そういう部分がまだあるかもしれない。しかしながら現時点では正しいと思われることを総合したつもりである。
最近は患者さんがインターネットで勉強し、正確にご自分の病気を診断していることも多くなった。これはとても良いことである。なぜなら患者さんと医師とが協力して治していく、二人三脚こそが治療への早道だからだ。そしてこの本をご自分の頭痛の原因、治療法を知る1つの方法にしていただきたいと念願する。
なるべく頭痛の国際分類第2版(ICHD-II、2004年1月)に対応させた*。この本を読んで国際分類に慣れてくだされば、幸いである。そして頭痛学に興味をもっていただければこれ以上のことはない。
ただし、用語については翻訳作業が間中信也先生を中心にして、現在進行中である。このため、あるいは違う用語が当てられる可能性がある。次版で改訂する必要が生じるかもしれないことを、あらかじめご諒承を得ておきたい。
2004年3月 東京で 著者