著: | 押味和夫(元順天堂大学教授,エーザイ・ボストン研究所顧問) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 304頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2009年07月25日 |
ISBN: | 978-4-7849-5035-5 |
版数: | 第5版 |
付録: | - |
貧血から白血病まで、血液疾患のすべてを網羅。骨髄異形成症候群や組織球増殖症など、概念のつかみにくい疾患についても平易に解説しています。遺伝子レベルでの病態解明、分子標的療法の進歩、骨髄非破壊的同種造血幹細胞移植、第二世代チロシンキナーゼ阻害剤やDNA脱メチル化薬の開発等々、刺激的話題を満載。WHOから発表された造血器腫瘍の新分類(2008年改訂版)をも踏まえた充実の一冊です。
診療科: | 内科 | 血液内科 |
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シリーズ: | 「やさしい」シリーズ |
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第1章 血液疾患とは
第2章 血球の形態・機能と造血
第3章 貧血とは
第4章 鉄欠乏性貧血
第5章 悪性貧血
第6章 溶血性貧血
第7章 再生不良性貧血
第8章 赤芽球癆
第9章 二次性貧血
第10章 白血球増加と白血球減少
第11章 白血病とは
第12章 急性白血病
第13章 慢性白血病
第14章 白血病以外の骨髄増殖性疾患
第15章 骨髄異形成症候群(MDS)
第16章 リンパ節腫脹
第17章 悪性リンパ腫
第18章 脾の異常
第19章 組織球増殖症
第20章 エイズと成人T細胞白血病・リンパ腫
第21章 免疫グロブリンの異常
第22章 造血幹細胞移植
第23章 出血傾向と血栓症
おわりに─血液疾患の正しい診断と治療をめざして
第5版 序文
本書の第4版が出版されたのは2005年3月で、それからまだ4年しか経ってない。しかしこの間に血液学の領域では大きな進歩がいくつもみられている。
具体的には、
(1) 急性骨髄性白血病をはじめ多くの造血器腫瘍で遺伝子レベルの異常が明らかになり、異常な分子を標的とする分子標的療法が進んできたこと
(2) 遺伝子レベルでの病態の解明が進むにつれ、WHOによる疾患分類も染色体・遺伝子レベルで整理されてきたこと
(3) JAK2遺伝子異常の発見に伴い、真性赤血球増加症などの骨髄増殖性疾患(骨髄増殖性腫瘍)で診断基準が改訂されたこと
(4)慢性骨髄性白血病で第2世代チロシンキナーゼ阻害剤が開発されたこと
(5)骨髄異形成症候群でDNA脱メチル化薬が開発されたこと
(6)PET検査の導入により悪性リンパ腫の診断法がさらに改良されたこと
(7) 骨髄非破壊的同種造血幹細胞移植が生まれて10年余になり、従来移植が難しかった高年齢層にも造血幹細胞移植が施行できるようになってきたこと
(8)わが国の臍帯血移植が世界をリードする業績をあげていること
などである。
本書では、上記の8つの進歩を基にした改訂に加えて、ほぼすべての分野で、内容を大幅に変更した。慢性骨髄単球性白血病やイマチニブが有効な慢性好酸球性白血病に関する記述を新たに加え、血液細胞の種類と分化、発作性夜間血色素尿症、二次性貧血、悪性リンパ腫、成人T細胞白血病・リンパ腫、多発性骨髄腫などに関する最新情報を記載した。これまではあまり触れなかった病気の原因についても、今回はかなり詳しく解説している。分子標的療法を理解するには、分子レベルで病気の原因を理解することが必要不可欠だからである。
筆者自身にも最近、大きな変化があった。米国の実情をもう少し勉強したいので、定年まで2年を残して1年前に渡米した。そのため米国内の新しい情報を得る機会に恵まれてきてはいるが、今度は逆に日本で進行中の治験とか承認済みの薬剤とかの情報に疎くなった。できるだけ日本国内の最新情報を得ようと心がけてはいるが。
本書では、患者やその家族の方が抱く疑問点、すなわち、自分の、あるいは身内の病気が何で、その原因は何か、その病気はどのように進むのか、現在どのような治療法があるのか、今後治療法はどのように進歩するのか、などの疑問点に答えられるように努めた。一方、医師・看護師をめざして勉強中の学生諸君、研修医、若い血液内科専門医、血液学の現状を知りたい方々には、どうしたら最新・最高の医療ができるかを知る一助になることをもめざしている。最新の医薬品情報は、薬の開発にあたっておられる方々にも少しはお役に立つものと思う。というわけで、大変欲張った目標を掲げている。したがって、わが国だけではなく米国における最新情報も加えるよう努めた。ただし今回は、第一線の情報をお伝えする目的で本書を書いているので、これまでの版とは違ってやさしくはない内容があることを承知して欲しい。まだ日本では使えない薬の話が多いことにも注意して欲しい。
医学は日進月歩、血液学も例外ではない。このような進歩を直接体験できて、しかも体験を基に書いた本書を読者の皆様にお届けできることは筆者にとって大きな喜びである。しかし、今日は常識に見えても明日には変わってしまうこともある。筆者の理解が不十分な箇所や間違っている箇所もあろうかと思う。このようなときは、厳しくご指摘願いたい。本書が、血液の病気で苦しんでおられる患者さんやその家族の方々、これから血液学を学ぶ若い学生諸君など、多くの人々にとって、少しでも役に立つ書になることを願っている。
2009年4月
ボストン郊外の寓居にて 押味和夫