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最新の知見から 乳がんインフォームドコンセントガイド

乳がん患者さんへの説明・指導に最適な1冊

定価:3,300円
(本体3,000円+税)

在庫切れです

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ほか編: 森本忠興(徳島大学名誉教授)
ほか編: 丹黒章(徳島大学教授)
ほか編: 岡崎邦泰(くにとみ外科胃腸科医院院長)
判型: B5判
頁数: 200頁
装丁: 単色
発行日: 2011年06月10日
ISBN: 978-4-7849-6191-7
版数: 第1版
付録: -

最新の知見、ガイドラインをもとに、乳がんの諸検査、診断方法、各種治療法まで全領域にわたり、53項目のQ&Aで,わかりやすく解説しています。 手術に関する疑問はもちろん、術前・後の治療内容およびその副作用対策、乳房再建から日常生活面における悩み事への対応まで、網羅しました。 患者さん、その家族への説明にお使い頂けます。

診療科: 外科

目次

Q 1 乳がんとは ─ 発生と進展 ─
Q 2 乳がんの原因は
Q 3 乳がんになりやすい人とは
Q 4 乳がんの症状は
Q 5 乳がんの種類と進行度は
Q 6 乳がんと肥満の関係は
Q 7 乳がんは遺伝するか
Q 8 ホルモン依存性のある乳がんとは
Q 9 乳房の自己検査について
Q 10 乳がん検診とは(マンモグラフィ・デジタルマンモ・超音波・触診などの特徴)
Q 11 乳がんは何科に行ったらよいか
Q 12 乳腺症,線維腺腫などとの鑑別は
Q 13 診断のために行われる検査は
Q 14 病理検査の報告と解釈は
Q 15 インフォームドコンセントとは
Q 16 心理的サポート,緩和ケア,家族への対応は
Q 17 セカンドオピニオンとは
Q 18 乳がんの治療経過は
Q 19 妊娠・産褥期の乳がん治療は
Q 20 ザンクトガレンのコンセンサスとは
Q 21 術前補助療法(ネオアジュバント療法)とは
Q 22 手術(温存・乳房切除)が必要な場合は
Q 23 入院・手術の準備と注意・スケジュールは(クリニカルパス)
Q 24 手術までの心配・不安への対応は
Q 25 センチネルリンパ節生検とは
Q 26 乳房再建とは
Q 27 手術後の後遺症とは
Q 28 術後のリハビリは
Q 29 手術後の後遺症 ─ リンパ浮腫(むくみ)とその対応は
Q 30 放射線治療が必要な場合とその方法は ─ 乳房温存療法,乳房切除術後
Q 31 放射線治療が必要な場合とその方法は ─ 局所・領域再発,遠隔転移
Q 32 抗がん剤とは(種類・効果・価格)
Q 33 外来化学療法とは
Q 34 化学療法の副作用と注意事項は
Q 35 内分泌療法が必要な場合は
Q 36 内分泌療法の副作用は
Q 37 分子標的治療とは
Q 38 新しい治療法は
Q 39 手術後の心配・不安への対応は
Q 40 乳がん治療後の妊娠・出産について主治医の対応は
Q 41 日常生活や家事・仕事上での注意・工夫は
Q 42 がん治療中や治療後に気になる脱毛,メイク,ボディの悩みへの対応は
Q 43 術後の食生活での工夫と注意点は
Q 44 術後の性生活,妊娠と出産について
Q 45 術後の下着と洋服の工夫と注意は
Q 46 術後のスポーツ時の注意と工夫は
Q 47 再発と転移の様式・症状は ─ 局所再発と遠隔再発
Q 48 再発と転移が起こったらどのような治療を行うか
Q 49 骨転移の治療とは
Q 50 肺転移の治療とは
Q 51 脳転移の治療とは
Q 52 皮膚転移・皮膚潰瘍に対する対応は
Q 53 関連したサイトは
索引
“コラム”
・特殊な乳がん
・閉経後のエストロゲンはつくられる場所が変わる
・乳がんのダブリング・タイム
・「良いがん検診」の条件・検診の勧め
・NPO法人マンモグラフィ検診精度管理中央委員会
・乳がん専門医制度
・ 標準的治療,EBMとは
・乳がん手術の費用
・臨床試験に参加すること
・タモキシフェンと子宮体がんの発生
・医療用かつら・帽子の相談会
・健康食品の効果
・術後のスポーツウェア・水着の選び方
・乳がん手術後も堂々と温泉に入りたい!
・PET検査"

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序文

近年,本邦の乳がん罹患・死亡はともに増加しています。2005年の全国がん罹患推計によると,乳がん罹患数は50,695人であり,本邦における女性のがん罹患の1位です。本邦の乳がんは女性16人に1人の発生といわれていますが,最近では,年間6万人以上が乳がんに罹患しているともいわれています。死亡に関しては,2009 年の乳がん死亡数(実数)が11,918人・第5位であり,増加傾向にあります。一方,欧米では,1980年代後半から乳癌死亡率の低下がみられていますが,この要因の1つには,早くからマンモグラフィ検診が導入され,高い受診率(70~80%)が挙げられます。本邦では,マンモグラフィ検診の普及の遅れ等から,乳がん死亡・罹患ともに増加しているといえます。
さて,最近の乳がんの診断と治療の進歩には目を見張るものがあります。乳がんの生物学的性状がわるにつれ,「乳がんは全身病である」との観点から, 局所療法としての手術療法よりも全身療法としての薬物療法を重視するようになりました。手術療法では,乳房切除から乳房温存療法やセンチネルリンパ節生検が主役となりました。薬物療法では,術後再発を少なくし治療成績を向上させるために行われる術前後の薬物療法として,内分泌療法や化学療法に対するウエイトが高まっています。薬物療法では,多数の臨床試験から得られる明確なエビデンスのある治療法が要求されるようになってきました。また,遺伝子背景からみた乳がんのサブタイプ分類も試みられ,サブタイプ別に薬物療法が検討されています。
一方,乳がんの診断手技の進歩も著しく,CT,MRI,PETなどが日常的に行われるようになり,乳がん診療はますます複雑かつ高度になってきています。そして,これからの医療はインフォームドコンセント(IC)の時代となってきました。すなわち,説明と同意により,患者さんが自分の病気や病態を適正に理解して,治療法を自己決定し,医療行為に積極的に参加するようになっております。言い換えれば,わかりやすい医療の 提供が必要とされる時代です。
我々は,2001年に『乳がん術後の運動・生活ガイド』を,2006 年に『乳がん治療をめぐる運動・生活ガイド ─ 検診からリハビリまで』を出版してきました。この度,最近の乳がんの診断と治療の進歩に則して「最新の知見から 乳がんインフオームドコンセントガイド」と書名を変え,まさしく最新の知見に基づき,新版として発行することに致しました。本書では, 前書と同じくQ& A形式にて乳がんの全領域をほぼ網羅した充実した内容になったと考えております。 本書が患者さんおよび乳がん診療に携わるスタッフの方々の一助となることを願ってやみません。"

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レビュー

【書評】乳がん患者さんへの説明・指導に最適

池田 正(日本乳癌学会理事長/帝京大学医学部外科学教授)
インフォームドコンセントは「説明と同意」と訳されているが、診断・治療などのbenefitとharmを、その他の方法との比較も交えて患者に説明し、納得の上で同意を得ることである。このことは、すなわち患者と医療者との共同作業を意味し、医療者が分かりやすく説明する必要があると同時に、患者側も共通の理解の上に納得する必要がある。

本書は、「乳がんとは─発生と進展─」から始まり、病理検査の報告と解釈、診断、手術、抗がん剤治療、再発に至るまで、乳がんのすべてがQ and A形式で網羅されている。かつその内容を見ると、遺伝子背景から見た乳がんの分類や、クリニカルパス、乳房再建、分子標的治療など最新の情報が分かりやすく記載されている。乳がんの診療は日進月歩であるが、少なくとも現時点での最新の事柄が網羅されており、この1冊があれば患者を中心として医師、看護師、薬剤師、技師らが共通の基盤に立って話し合いができるであろう。

前版は「乳がん治療をめぐる運動・生活ガイド─検診からリハビリまで」というタイトルであったことからも分かる通り、本書には患者の生活ガイド的な部分も色濃く残っており、インフォームドコンセントの時だけでなく、患者にとっては常日頃参照する本としても有用である。乳がんが専門でない方にとっては通読するのは骨が折れるであろうが、本書はQ and A形式なので、必要な部分のみを拾い出して読むこともできる。所々に出てくるcolumnも乳がん診療周辺の知っておくと便利な事項が精選されており、非常に役立ちそうである。

編者をはじめ、執筆陣はいずれも第一線で活躍中の日本の乳がん診療をリードしている方たちであり、よくこの分量にこれだけの知識を詰め込めたものと感嘆する次第である。本書が、乳がん患者のみならず医療関係者に広く読まれ、日々の診療がスムーズに行える一助になることを切に願っている。

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正誤情報

下記の箇所に誤りがございました。謹んでお詫びし訂正いたします。

2011年に3月に開催された第12回ザンクトガレン国際乳癌カンファレンスでの早期乳癌治療の推奨内容が報告されましたので、ここに追加しておきます(文責:大住省三)。

第11回の同カンファレンスの推奨内容と大きく変わった点は、腫瘍のサブタイプの考えを明確に押し出し、サブタイプ別に薬物療法の内容を決める方針を採用したことです。特に化学療法を行うかどうかの判断基準として第11回までの推奨内容では、リンパ節転移の状況、原発腫瘍の大きさ、脈管侵襲の有無など、腫瘍の進行状況をかなり考慮していました。これに対し第12回の推奨内容では、化学療法をするかどうかを基本的には腫瘍のサブタイプで決めようとしています。これは特にホルモンレセプター陽性HER2陰性例で顕著に示されました。

ここで言うサブタイプは多遺伝子アッセイ(本来サブタイプの考えは多遺伝子アッセイの結果から出されました)を必ずしも行うのではなく、多遺伝子アッセイの結果と完全には一致しないことを認めつつも、通常の病理検査結果を用いて決めることにしています。ホルモンレセプター、HER2の判定はASCO/CAPのガイドラインに従います。

サブタイプは5つに分け、その定義の詳細は表1に示します。ルミナルA、ルミナルB (HER2陰性)、ルミナルB (HER2陽性)、HER2陽性 (非ルミナル)、トリプルネガティブ(乳管癌)です。


表1 本質的なサブタイプに代用する分類の定義

本質的な(Intrinsic) サブタイプ 

臨床・病理学的定義 

備考 

ルミナル A

ルミナル A”

 

 

 ER、 PgRのいずれかあるいは両方陽性

HER2陰性

 Ki-67 低値(<14%)

Ki-67のカットオフ値はPAM50を用いてサブタイプ分けをしたときの結果と比較して決めた

各施設でのKi-67染色のクオリティコントロールは重要

ルミナル B

ルミナル B (HER2 陰性)”

 

 

 ER、 PgRのいずれかあるいは両方陽性

HER2陰性

 Ki-67 高値

多遺伝子アッセイで示される高い増殖能は予後不良のマーカーである。もし、Ki-67の測定値が信頼できないときは、グレードなどのほかの増殖能の評価を用いて“ルミナルA”と“ルミナルB(HER2 陰性)”を区別しても構わない

 

ルミナル B (HER2 陽性)”

 

 

ER、 PgRのいずれかあるいは両方陽性

Ki-67 の値は問わない

HER2強発現あるいは増幅あり

 

内分泌療法と抗HER2療法のいずれも適応となりうる

Erb-B2 強発現 

“HER2 陽性 (非ルミナル)”

 

 

HER2強発現あるいは増幅あり

 ER、 PgRいずれも陰性

 

基底細胞様(Basal-like)’

トリプルネガティブ (乳管癌)”

 

 

ER、 PgRいずれも陰性

 HER2陰性

‘トリプルネガティブ’と‘基底細胞様’は約80%重なっているが、‘トリプルネガティブ’の中には髄様癌や腺様囊胞癌などの再発リスクの低い特殊型が含まれる

基底細胞ケラチンの染色は基底細胞様の腫瘍を選び出すのに役立つことが示されているが、その再現性は十分ではなく、一般的に使用することは考えない


推奨される薬物療法の内容の詳細を表2に示します。

ルミナルAであれば原則内分泌療法のみ。ただし、リンパ節転移が4個以上ある場合は化学療法も通常考慮します。ルミナルB (HER2陰性)のとき内分泌療法は推奨されますが、化学療法の適応についてはルミナルAよりも不明確で、ホルモンレセプターのレベルが低いか、再発のリスクが高いか、患者さんが希望する場合が適応となると述べているに過ぎません。ルミナルB (HER2 陽性)では原則全員に内分泌療法+化学療法+トラスツズマブを行います。ER2陽性 (非ルミナル)では化学療法+トラスツズマブを行いますが、pT1aでリンパ節転移を認めない場合は、全身補助療法は行わなくてもよいかもしれないと述べています。

トリプルネガティブ(乳管癌)は原則全員化学療法の対象としています。なお、トリプルネガティブ(乳管癌)とは、ホルモンレセプター陰性でかつHER2陰性であるが、組織型が特殊なものを除くという意味です。


表2 それぞれのサブタイプでの推奨される全身療法

サブタイプ

治療内容 

備考 

ルミナル A’

内分泌療法のみ

ごく一部の症例に化学療法が必要(たとえば、リンパ節転移が高度あるいは他の指標で再発のリスクが高い場合)

ルミナルB (HER2陰性)’ 

内分泌療法±化学療法

化学療法を追加するかどうか、また追加する場合どのような化学療法をするかは、ホルモンレセプターの発現レベルや再発のリスクの高さ、および患者さんの希望などで決めることになる

ルミナルB (HER2陽性)’ 

化学療法+抗HER2療法+内分泌療法

このグループで化学療法をしなくてよいとするデータはない

‘HER2陽性(非ルミナル) 

化学療法+抗HER2療法

再発のリスクが非常に低い患者(たとえばpT1aでリンパ節転移なし)では全身補助療法なしでもよいかもしれない

トリプルネガティブ(乳管癌)’ 

化学療法

 

特殊な組織型

 

 

A. 内分泌反応性 

内分泌療法

 

B.内分泌非反応性

化学療法

髄様癌や腺様囊胞癌では(リンパ節転移陰性なら)化学療法は必要ないかもしれない


参考文献)
1) Goldhirsch A, Wood WC, Coates AS, et al :  Strategies for subtypes-dealing with the diversity of breast cancer : highlights of the St Gallen International Expert Consensus on the Primary Therapy of Early Breast Cancer 2011. Ann Oncol 2011 Jun 27. [Epub ahead of print]
2) Hammond ME, Hayes DF, Dowsett M, et al :  American Society of Clinical Oncology/College of American Pathologists guideline recommendations for immunohistochemical testing of estrogen and progesterone receptors in breast cancer. J Clin Oncol 28 : 2784-2795,  2010.

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