本年度の診療報酬改定の「医療技術の適切な評価」の目玉は、ロボット支援下内視鏡手術(以下、ロボット手術)の保険適用の対象が、一気に12の術式に拡大されたことです。
これにより、患者の自己負担は400万~100万円から10万円前後に劇的に軽減します(高額療養費制度を用いて)。他面、ロボット手術が、2012年に前立腺悪性腫瘍手術に、2016年に腎悪性腫瘍手術に保険適用された時に認められた「内視鏡手術用支援機器加算」は見送られました。その理由は、ロボット手術は、現時点では既存の内視鏡手術に比べた優位性が示されていないためとされています。
私は、本年度から実施される医薬品・医療機器の費用対効果評価の趣旨を踏まえると、この決定は妥当と思います。そのため、絹笠祐介東京医科歯科大学教授の本誌での次の指摘に共感しました。「既存手術に対するロボット手術の優位性は、エビデンスとして明確には示されていません。そうした段階で高い点数を付けるのはおかしな話です。ロボットが数億円もするから高い点数を付けるのではなく、確実に有効な治療だから加点していくというのがまっとうな道筋ではないか」(4902号:8-9頁)。
ただし、外科系学会の一部からは、ロボット支援手術の経費の多さ(本体価格2億~3億円+年間維持費2000万~3000万円)を理由にして、「腹腔鏡下手術よりも約50万円は高い設定が必要」との意見や、「採算割れの点数設定はロボット手術の普及を妨げる」との批判が出されているとも報じられています。
前者は上述した費用対効果評価の趣旨を理解しておらず論外ですが、後者には「既視感」を感じました。というのは、同様の批判は過去、高額の先端技術の保険導入時にも主張されたが、その後の事実で否定されているからです。以下、この点をCTとMRIについて振り返り、ロボット手術の普及は装置価格低下の有無にかかっていると指摘します。
高額の先端医療技術の保険適用で「採算割れ」点数が最初に問題にされたのはCTです。CTは1972年にイギリスのEMI社が開発し、日本では1975年に東京女子医大に第1号機が設置され、1978年に保険適用されました。その診療報酬は単純撮影で1万2000円(造影剤使用で6000円加算)とされました。これは保険適用前の「慣行料金」約3.5万円(全額自費またはシンチグラムによる「振替請求」)の約3分の1に過ぎませんでした。