麻疹の流行を受けた緊急シンポジウムが1日、日本感染症学会学術講演会と日本化学療法学会総会の合同学会で開催され、沖縄県の麻疹アウトブレイクについて、椎木創一氏(沖縄県立中部病院感染症内科)が報告した。
これまで沖縄県で麻疹と確定診断されたのは99人(5月28日時点)。このうち75%は成人だった。椎木氏は「職場健診などをからめた成人へのワクチン接種のアプローチが必要だと痛感した」と指摘した。その一方で、麻疹診療の75%は未成年であり、麻疹診療全体の90%が「麻疹もどきであった」と報告。「麻疹もどきと麻疹をどう区別するか、現場は苦しんだ。このアンバランスを整えるためには、救命救急と小児科、内科との連携が重要」と述べた。
99名のワクチン接種歴をみると、不明49%、0回17%、1回21%、2回9%だった。患者の中に2回接種者もいたため同病院では、接種歴だけで麻疹を除外できないとして、救命救急センターの診療申込書を変更し、「発熱」「発疹」「1カ月以内の海外渡航歴」のうち2つ以上該当すれば陰圧室対応としたことを紹介。これを参考に各施設でトリアージの方法を検討することに期待を示した。
また、3月に発生した1例目は外国人旅行者であり、同病院を夜中に受診したことを説明。最初に診療した研修医は麻疹を診た経験がなかったため診断がつかず、救命救急センターに相談した結果、救急医が麻疹と診断したエピソードを紹介し、「若い医師は教科書で麻疹を勉強していても、“生”麻疹を診たことがない。初療を担当する医師が麻疹を疑うことができるかが大事で、診断の早さが曝露者を増やさないポイント」と強調。麻疹を早期診断するのは感染症のプロではなく、救命救急医、小児科医、内科医、研修医であることが多いとして、「非専門家を巻き込んだ教育活動が必要」と指摘した。
さらに、沖縄県で麻疹が多発した理由の1つとして、1例目の患者が旅行者だったため観光地をまわり、各地で二次、三次感染者が発生したためとし、「旅行者は移動するために来ているので、症状があっても歩き続ける。こうしたことは新型インフルエンザ、MERSといった他の感染症でも起こりうることだ」と注意喚起した。