薬剤耐性(AMR)感染症が今、国際的課題となっている。英国の研究機関は2014年、AMRによる世界の死亡者は毎年70万人に上り、何も対策を取らないと2050年には年間1000万人の死亡が想定されるとの推計を発表した。
こうした状況から世界保健機関(WHO)は加盟各国に行動計画の策定を要請。日本政府は2016年4月、20年までの5年間に実施すべきAMR対策を「アクションプラン」として取りまとめ、数値目標を掲げた。経口抗菌薬(セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライド)の使用を半減し、静注抗菌薬の使用量を2割削減することで、抗菌薬全体の使用量を3分の2に減少させることを目指している。
アクションプランの一環として厚労省は昨年6月、外来診療を行う医師を対象に『抗微生物薬適正使用の手引き 第一版』を作成した。想定する患者群は「基礎疾患のない成人および学童期以上の小児の急性気道感染症と急性下痢症」だ。抗菌薬が必要な状況と必要でない状況を判別できるように支援することを目的としている。
さらに厚労省は、2018年度診療報酬改定でも抗菌薬適正使用を評価する取組を行っている(表)。
診療所を含む外来での抗菌薬適正使用はアクションプラン推進の鍵となる―。このような認識から日本化学療法学会・日本感染症学会は今年2月、診療所医師の抗菌薬適正使用の現状を合同で初めて調査した。1500診療所に調査票を送付、回収数は274(回収率18.3%)だった。