政府は25日、高齢化に関する制度・産業で先行する日本が、アジアで急速にすすむ高齢化社会に対応するための制度構築を支援する「アジア健康構想に向けた基本方針」を改定した。アジア諸国で医療・介護を中心とした疾病の予防などによるバランスのとれたヘルスケアの実現を図る。
2015年の国連サミットでは、193の加盟国が30年までに達成すべき目標として「持続的な開発目標」(SDGs)を定めた。基本方針は、これに盛り込まれているユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成への貢献を視野に、16年に決定。アジアで急速に進む高齢化に対応した健康長寿社会と持続的な経済成長の実現に向け、互恵的な協力を行うとしている。5年後に見直すとしていたが、新たに顕在化した課題やテーマに対応するために前倒しで改定した。
改定基本方針では、これまで軸足を置いていたアジアの高齢化社会に必要な介護産業の振興、人材育成等に加え、医療・介護を中心とした疾病の予防、健康な食事等のヘルスケアサービス、健康な生活のための街づくりなどにより、バランスのとれたヘルスケアの実現を目指すとしている。この構築に向け、①具体的事業によるサービス提供、②ヘルスケアに必要な基盤構築、③人材還流―の3つの戦略アプローチを提示した。
①のサービス提供については、医療・介護の海外拠点構築の支援継続やアジア市場に適した医療機器・健康関連機器の国際展開を行うとした。
②の基盤構築では、アジアが医薬品の自給自足を目指すための取り組みを支援すると明記。多剤耐性菌制御のための抗菌薬の適正使用といった、日本が持つ知識・経験を伝え、アジアの医療を持続可能で新しい科学的知見を生み出す場にするとしている。
③の人材還流では、日本の医学部などへの留学や、医師をはじめとするヘルスケア人材の交流、研修を東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)との連携により実施する。
改定基本方針ではまた、日本の医療の高度化や持続可能性の向上を目指し、医療渡航者の受け入れ、外国人観光客への対応、医療拠点の国際展開について一体的に取り組むとしている。その上で、「公的医療保険を前提とした日本の医療制度の中で、例えば、地域医療計画における外国人向け病床の位置づけ等、外国人向けの医療に関わるルールを明確にすることを検討する」との方針を示した。
このほか、アフリカでは今後も人口増加とアジアとの関係強化が期待されているとして、「アフリカ健康構想」を検討することも明記。アフリカに適した持続可能なヘルスケアの構築について、来年開催される第7回アフリカ開発会議での提示を目指す。