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腹痛[今日読んで、明日からできる診断推論 実践編(1)]

No.4694 (2014年04月12日発行) P.52

監修: 野口善令 (名古屋第二赤十字病院 副院長・総合内科部長 )

岩田充永 (藤田保健衛生大学救急総合内科准教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-04-07

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  • 病 歴

    63歳,男性。昼頃から心窩部痛が出現。しだいに増強し,我慢できなくなったため救急車を要請した。

    スナップ診断

    「63歳,男性,増悪する激しい心窩部痛」という情報だけではスナップ診断はできないが,「増悪する」「激しい」というキーワードから,重篤な疾患を見落としてはならない。


    分析的アプローチ

    ■なぜその疾患名が挙がったのか

    まず,腹痛をきたす重篤疾患のハイリスク群に該当するかを考えたい。

    ①高齢者:重篤疾患の割合が高いが,腹部所見に乏しい(→63歳は微妙な年齢)。
    ②ステロイド使用者:消化管穿孔のリスクが高くなり,①と同様に重篤疾患でも症状・所見に乏しくなる(→内服歴を確認したい)。
    ③非ステロイド性抗炎症薬使用者:消化性潰瘍のリスクが高くなる(→内服歴を確認したい)。
    ④心房細動・動脈硬化性疾患あり・透析患者:血管性病変のリスクが高い(→病歴と検査結果を確認したい)。
    ⑤手術歴:手術歴のあるイレウスは術後癒着性イレウスの可能性が高いが,手術歴のないイレウスは絞扼性イレウスなど緊急手術が必要である可能性が高い(→最終排便や排ガス,手術歴を確認したい)。
    ⑥アルコール多飲歴:アルコール多飲者では急性膵炎のリスクが高くなる(→病歴を確認したい)。
    ⑦糖尿病の既往:糖尿病患者は,ケトアシドーシスで腹痛をきたすこともあるし,急性心筋梗塞のリスクファクターでもある(→病歴と腹部以外の危険な疾患を確認したい)。

    私のクリニカルパール

    腹痛症例では,診断の確定よりも重篤な疾患を見逃さないという視点で診療を進めていく。

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