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リンパ節腫脹[今日読んで、明日からできる診断推論 実践編(18)]

No.4717 (2014年09月20日発行) P.41

監修: 野口善令 (名古屋第二赤十字病院 副院長・総合内科部長 )

久田敦史 (名古屋第二赤十字病院総合内科)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-23

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  • 病 歴

    20歳,男性。1週間前より38℃台の発熱を認め,2,3日前より頸部のしこりを自覚したため受診した。診察室には歩いて入室した。飲み込みにくさの自覚はない。特記すべき既往はない。食事摂取量は減っているが,普段の半分程度は摂取できる。

    スナップ診断

    若年者の発熱,頸部リンパ節腫脹であり,非特異的なウイルス感染,伝染性単核球症,A群β溶血性連鎖球菌による咽頭炎が思い浮かぶ。緊急疾患として,急性喉頭蓋炎,扁桃周囲膿瘍を考慮するが,飲み込みにくさの自覚症状がなく,罹患の可能性は高くないと見積もることができる。


    分析的アプローチ

    ■なぜその疾患名が挙がったのか

    リンパ節腫脹の鑑別疾患マップを図1に示す。
    20歳という年齢から,悪性腫瘍(癌リンパ節転移)の可能性は低い。腫瘍によるリンパ節腫脹の頻度は,40歳未満では0.4%と稀であるが,40歳以上では4%に上昇する1)。部位は頸部リンパ節であり,口腔内,上気道疾患を念頭に置く。頸部リンパ節腫脹の3分の2は,非特異的な原因もしくは上気道疾患に伴うものである2)
    本症例は急性発症であり,悪性リンパ腫の可能性は低いが,随伴症状・所見として,寝汗,体重減少,咽頭痛,脾腫の有無を確認する必要がある。
    「見逃し注意!」として急性喉頭蓋炎や扁桃周囲膿瘍は一応想起するが,1週間前から発熱を認めていても飲み込みにくさの自覚症状がないことを考えると,可能性は低そうである。HIV急性感染は,伝染性単核球症として発症することがあるため,伝染性単核球症の鑑別診断に含めておく。
    なお,本症例は歩いて診察室に入ってくることができ,食事摂取もある程度できるため,外来で経過をみることができそうである。

    私のクリニカルパール

    主訴にかかわらず,表情や診察室に入ってくるときの様子から,緊急に対処しなければならないか,外来で経過をみることができるかを判断する。

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