国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターは8日、かぜ診療における抗菌薬適正使用のリーダーを育成するため、「かぜ診療ブラッシュアップコース指導者講習会」を初めて企画し、千葉市で開催した。 同センターは、最も日常的な疾患であるかぜ診療での抗菌薬適正使用を薬剤耐性(AMR)対策の重要な柱と位置づけ、昨年度から、かぜ診療に関するセミナーとして「かぜ診療ブラッシュアップコース」を全国で開催している。今回の指導者講習会は抗菌薬適正使用の指導者となる医師を対象に実施。各地域でかぜ診療ブラッシュアップコースを開催する際の知識や技術を23人の医師たちが学んだ。
講師の山本舜悟氏(京大)は、かぜ診療に関するエビデンスとして、「抗菌薬を処方しても治癒が早くなるわけではない。成人では抗菌薬による副作用がプラセボ群よりも2.62倍(95%信頼区間1.32~5.18)起こりやすくなる」(Cochrane Database Syst Rev. 2013;6:CD000247)などと多数を提示。また、2015年に米国消化器病学会が発表したガイドラインでは、急性の単純型憩室炎に対する抗菌薬処方が選択制になったことを紹介し、「憩室炎に抗菌薬を処方することが習慣だった私は、これを知った時にとても驚いた。これは、かぜに抗菌薬を出すことが当たり前だった時代に診療していた医師たちの現在の葛藤に似ているのではないか」と述べ、「過去は変えられないので、これからのかぜ診療をどうするのか、という視点で抗菌薬適正処方を伝えてほしい」と要請した。
抗菌薬を欲しがる患者への説明については、「昔は」「実は」を強調した説明方法を披露。具体的には「“昔は”かぜに抗菌薬を出すことが当たり前だった時代が確かにあった」「“実は”最近の研究結果では、普通のかぜに抗菌薬は効かないことがわかってきた」「効かないだけではなく、副作用や耐性菌の問題などデメリットもそれなりにある」と例示し、「抗菌薬の代わりに『説明』を処方しましょう」と呼びかけた。
関連書籍
かぜ診療マニュアル<第2版>
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