【急性,慢性心不全にわかれていたガイドラインを統合】
第82回日本循環器学会学術集会(2018年3月23~25日)において「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」1)が発表された。大幅なガイドライン改訂となったが,最大の変更点は急性・慢性心不全でわかれていた心不全診療ガイドラインが1本化されたことである。これは,急性および慢性心不全は連続した病態であり,シームレスに治療をすることが望ましいためである。
また,心不全は進行度によりステージA~Dの4段階にグレーディングされた。注目すべきは,まだ心不全を発症していない段階を「ステージA(リスク因子のみ)」あるいは「ステージB(左室の器質的変化のみ)」と定めた点である。これは心不全が進行性の疾患で根本的な治療が困難なため,予防に重点を置く必要があるからである。症候性の心不全に至ると「ステージC」,さらに治療抵抗性に至ると「ステージD」と分類される。ステージDにおける推奨治療として「緩和ケア」が挙げられていることも特記すべき点であり,同ガイドラインは新たに緩和ケアに関する記載を充実させている。
今回の心不全ガイドラインは,上記以外にも多くの改訂点があり,心不全に対する疾患概念やアプローチは変わりつつある。高齢化社会が加速するわが国において,心不全患者は今後も増加の一途をたどることが予想され,心不全診療に関わる医師には,ますます知識,診療体制のup dateが望まれている。
【文献】
1) 日本循環器学会/日本心不全学会, 編:急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版). ライフサイエンス出版, 2018.
【解説】
網岡尚史,伊藤 浩* 岡山大学循環器内科 *教授