日本医師会の横倉義武会長は10日の会見で、財務省が9日の財政制度等審議会財政制度分科会で「予防医療等による医療費や介護費の節減効果は定量的に明らかではない」と主張したことについて、「地域の健康づくり活動に水を差し、強い怒りを感じている」と述べ、反論した。
会見で横倉会長は、2015年から経済団体、医療団体、保険者などの民間組織や自治体が「日本健康会議」を組織し、健康増進活動を全国で展開していることを紹介し、「こうした取り組みにより、2017年の医療費は2011年に予測した金額よりも5兆円以上も下回っている。特に、糖尿病予防の医療費削減効果は明らか」と主張。さらに、内閣府の経済・財政一体改革推進委員会が今年3月、健康寿命の延伸による高齢者の就労増がもたらす可処分所得の増加額は年間約2400億円と試算していることを提示した。その上で、「国民の幸せのために予防に費用がかかるなら、国は財源を確保すべき。医療費削減ありきではなく、健康増進を目的とした政策の結果として、医療費が削減される取り組みを地域で進めることが重要だ」と訴えた。
横倉会長はこのほか、9日に財務省が示した個別の政策についても見解を述べた。医療機関の控除対象外消費税問題について財務省が「医療保険制度内での対応とすべき」としていることについては、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会と四病院団体協議会が8月に、新たな税制上の仕組みの創設を求めた「提言」を公表したことを紹介し、「『提言』が実現されることを望む」と述べた。
また、新たな医薬品・医療技術の保険収載について財務省が「費用対効果や財政影響など経済性の面からの評価も踏まえて可否を決めるべき」としていることについては、「国民の幸福の原点は健康であり、医療技術の革新の恩恵はすべての国民が受けるべき」と指摘。さらに「対象患者が多く、使用量が増加すれば薬価は必然的に下がるため、費用対効果は改善する。対象患者が少ないために価格が高額になるものでも、誰もが希少疾患の患者になる可能性がある」と説明し、「新しい医療技術は有効性・安全性が確認され次第、迅速に保険収載することが重要」と強調した。
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