図1 胸痛・胸部不快感の原因
虚血性心疾患による症状のパターンを図2に示す。胸痛はなく,呼吸困難,不安感,嘔吐,冷汗のみのことがある。このような非典型的な症状は,高齢者,女性,糖尿病患者に多い。
症状の部位を図3に示す。範囲は,ピンポイントではなく,握りこぶし大の範囲が多い。胸部以外の部位での「放散痛のみ」を訴える患者も多い。ただし,臍部より下や背中への放散痛は稀である。
安定労作性狭心症における症状の増悪・軽快因子を表1に示す。冠血流は拡張期に依存しているので,拡張期が短縮する頻脈は増悪因子となる。肥大型心筋症や大動脈弁狭窄症などの構造異常や冠動脈攣縮などの機能的異常が狭心症の原因となることがある。安定労作性狭心症の症状の持続時間は3〜数分である。数秒間のみの症状では虚血性は否定的。また,逆に6時間以上続く長時間の症状で心電図変化がないときも虚血性は否定的。
緊急度と重篤度の高い急性冠症候群(不安定狭心症と心筋梗塞)における症状の特徴を表2に示す。これらは安定狭心症と比べたものである。