今回は体の後方部分の痛み─腰,背中,後頸部の疼痛についてである。頻度の高い症状で,仕事に支障をきたす原因としても重要である。事故・外傷では補償金をめぐって,痛みが誇張して表現される場合もある。
腰痛の原因には不明なものも多い。椎間板疾患のため何度も手術を受けたにもかかわらず,痛みや身体障害が続いている患者もいる。一方で,血管病変,感染症や悪性腫瘍などが原因になっていることもあり,正確な診断がここでも大切である。では,今回の症例をみてみよう。
主な原因を,局所痛と関連痛にわけて示す(表1)。腰痛患者では腰椎疾患が原因である場合が多い。このときは放散痛に注意する。腰椎上部病変が原因の場合は腰部,鼠径部,大腿前部に,腰椎下部病変が原因の場合は殿部,大腿後部,下腿後面,足に放散痛が生じる。椎間板や脊椎の病変では,腰痛に神経根性疼痛を合併することが多い(表2)。
レルミット(Lhermitte)徴候は,頸を屈曲すると腰背部に電撃痛が走る所見。原因を問わず頸髄病変を示唆する。
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