【総肝管空腸吻合に関しては,ロボット支援下のほうが明らかに優れている】
先天性胆道拡張症(CBD)は,胆道の先天的な囊胞状あるいは紡錘状拡張と,膵胆管合流異常の合併を特徴とする。一方,膵胆管合流異常を認めるものの胆管拡張を伴わない,またはほとんど伴わない総胆管非拡張型膵胆管合流異常が存在し,総肝管径が5mm以下と細く,総肝管空腸吻合を腹腔鏡下に行うには高度な技術を要する。
手術支援ロボットda Vinci® Surgical Systemは,人間の手首の可動域を再現できるEndoWrist® instrumentを搭載し,また3次元の拡大視野で手術が行えるという利点がある。わが国では,15年に成人領域でCBDに対してロボット支援手術を施行した5例の報告があるが1),小児領域での報告はない。筆者らは総胆管非拡張型膵胆管合流異常の総肝管空腸吻合に,ロボット支援手術はきわめて有用と考え,院内倫理委員会の承認を経た上で,ロボットと腹腔鏡の双方の利点を生かしたhybrid手術を行っている。小児のCBDの総胆管周囲の剝離は,現時点ではロボットよりも従来の腹腔鏡下操作のほうがまだやりやすい点が多いため,総肝管空腸吻合のみをロボット支援下に行っている。吻合に関しては,ロボット支援下のほうが従来の腹腔鏡下の吻合よりも明らかに優れている。
今後,手術機器のさらなる進歩により,小児外科疾患においてもロボット支援手術が可能となる疾患が増えてくるものと思われる。
【文献】
1) Naitoh T, et al:J Robot Surg. 2015;9(2):143-8.
【解説】
村上 寛,山高篤行* 順天堂大学小児外科・小児泌尿生殖器外科 *教授