日本医師会は31日の会見で、2030年にあるべき医療の姿を打ち出す『日本の医療のグランドデザイン2030』の概要版を公表した。シンクタンクの日本医師会総合政策研究機構(日医総研)を中心に作成を進めているもの。構成は①あるべき医療の姿、②日本の医療に対する現状分析、③日医としての行動計画―の3部立てで、2000年に作成した『グランドデザイン2015』の内容も踏まえつつ、超高齢社会の到来などの社会情勢の変化を盛り込んだ。完全版は来年3月に公表予定。
横倉義武会長は会見で、社会において人が生命と尊厳を守りつつ生きられる環境づくりを主眼に置いたことを説明。行動計画は「あるべき姿」の実現に向けた提言と位置づける。横倉氏はまた、『2015』で描かれた医療の姿が、調剤技術料の伸び方を除き「ほとんどその通りになった」とも述べ、将来予測の的確さに自信を見せた。
日医総研の澤倫太郎研究部長によると、『2015』との違いの1つは「有事の医療」を取り上げた点。自然災害、CBRNEテロ、パンデミックなどへの対応に加え、医療情報のサイバーセキュリティーにも言及する。澤氏はまた、重要視する課題の1つとして結核を挙げ、多剤耐性、潜在性結核、海外からの移住者の感染例などに問題意識を示した。細谷辰之主任研究員は、『2030』の要点について「昨今、短期的な経済効率が優先され、人の命の大切さが見落とされがちだ。そこをまず謳った」と強調した。