食物アレルギーの予防を目的とした主要な原因抗原の除去により,罹患率はむしろ増加傾向となった
近年,早期から少量を摂取することで食物アレルギーの発症を予防する効果があることを示す研究結果が多く発表され,完全除去から早期摂取へとパラダイムシフトが起きている
既に発症した食物アレルギー児に対しても,少量を総負荷量とした食物経口負荷試験をすることで完全除去を避け,予後を改善する取り組みが行われている
1980年代~2000年代前半にかけて,米国では食物アレルギー(food allergy:FA)の予防を目的として,妊娠中・授乳中の母親や乳幼児に対するFAの主要な原因抗原の除去が試みられていた1)。しかし,その結果,食物アレルギーの罹患率はむしろ増加傾向となった。特にピーナッツアレルギーの有病率は,米国内での調査で1999年の0.4%2)から2010年には2.0%3)まで著明に増加し,誤食によるアナフィラキシーの増加が問題となった。2008年にDu Toitらは,乳児期からピーナッツを食べ始める習慣のあるイスラエルに比べて,摂取開始の遅い英国ではピーナッツアレルギーの発症率が5.8倍も高いことを報告した4)。これらの疫学調査から,米国小児科学会は離乳食を遅らせることはアレルギー疾患発症予防に有効ではないことを明記するに至った。さらに,2015年にDu Toitらが発表したピーナッツアレルギーの発症予防に関するランダム化比較試験(LEAP study)5)では,乳児期からのピーナッツの継続的な摂取にピーナッツアレルギーの発症予防効果があることが示された(図1)。
また,鶏卵についても前向き研究のメタ解析から予防効果が認められ6),特にわが国内で施行されたPETIT study7)では,アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis:AD)に対する積極的な治療と,少量からの加熱鶏卵の導入により高い発症予防効果が認められた。これを受けて日本小児アレルギー学会から「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」8)が発表され,早期摂取による食物アレルギー発症予防が注目されている(図2)。