食物アレルギー(FA)患者への栄養食事指導としては,誤食防止の除去食指導,必要栄養素の補充指導とともに「食べるための指導」を行っていく必要がある
食品摂取量を増量する際は医療機関での経口負荷試験(OFC)を基本とすべきだが,一部施設では計画的に閾値量を超える食事指導を行っており,安全性の検証も行われている
加工食品は定量的なアレルゲン摂取には向かず,アレルゲン食品そのものの摂取可能量から,安全域を見込んだ摂取を許可する指導が望ましい
「食物アレルギー診療ガイドライン2016」によると,栄養食事指導の原則は①必要最小限の除去,②安全性の確保,③栄養面への配慮,④患者家族のQOL維持,とされている。医療機関では,誤食防止を含めた除去食指導および必要栄養素の補充指導を行いつつ,上記原則に則った「食べるための栄養食事指導」を進めていく必要がある1)。
経口負荷試験(oral food challenge:OFC)または問診により,患者が一定量の食物摂取が可能だと判断した場合,自宅ではOFCの総負荷量を超えない範囲で繰り返し摂取させて,安全性を確認する。次に,摂取量の増量を行うためには,総負荷量を増やした段階的なOFCを繰り返すことが推奨されている。
一方,当科では,自宅で摂取量を計画的に増やし,やがて閾値量を超えていく食事指導を行っている。これは,食物アレルギー(food allergy:FA)に精通した医師と管理栄養士が治療方針を共有し,その安全性や家族のアドヒアランスも含めて密接にモニターしながら実施しているものである。
患者が一定量の食物を摂取できると判断した場合,単純に摂取可能量を提示するのではなく,可能であるならば栄養士などの協力を得て,摂取可能な食品の具体例を提示することが望まれる。食物アレルギー患者への「食べるための栄養食事指導」には,アレルゲンの特徴(加熱や加工による変化)や摂取時の注意点(体調不良,運動との関連),症状出現時の対応方法など細やかな説明が必要となる。本特集では当科での取り組みを通して,これらの内容に言及していきたいと思う2)3)。