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脳卒中と大気汚染

No.4935 (2018年11月24日発行) P.58

佐々木 勉 (大阪大学神経内科講師)

望月秀樹 (大阪大学神経内科教授)

登録日: 2018-11-21

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【PM2.5曝露が危険因子と報告されているが,関連性については地域差がある】

脳梗塞の危険因子として高血圧,糖尿病,脂質異常症,心房細動,喫煙などが挙げられるが,近年,PM2.5,黄砂などの粒子状物質による大気汚染が脳卒中の危険因子になることが示されている。メタ解析の結果より,過去10年間の科学的エビデンスにより,粒子状物質(PM)への長期曝露のうち,特にPM2.5曝露が脳卒中の危険因子であることが報告されている1)

Women’s Health Initiativeの研究においては,PM2.5濃度が10μg/m3上昇すると,致死性脳卒中は83%,非致死性脳卒中は28%,増加することが報告された2)。ただし,その関連性については地域差があることが,欧米1),中国の26都市を対象とした研究でも報告された3)
わが国においては,脳梗塞のうち,特にアテローム血栓性脳梗塞の発症と黄砂が関連していることが報告され4),そのメカニズムとしては,血管内皮障害,酸化ストレス,凝固能亢進などの寄与が想定されている4)。地域差があることも含めて,今後さらなる検討が必要である。

【文献】

1) Scheers H, et al:Stroke. 2015;46(11):3058-66.

2) Miller KA, et al:N Engl J Med. 2007;356(5): 447-58.

3) Liu H, et al:Stroke. 2017;48(8):2052-9.

4) Kamouchi M, et al:Stroke. 2012;43(11):3085-7.

【解説】

佐々木 勉*1,望月秀樹*2  大阪大学神経内科 *1講師 *2教授

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