【日本発の恐怖の真菌の死亡率は高いもので60%以上】
カンジダ属は,ヒトの生体内に常在する真菌である。院内感染症として血管内留置カテーテルを介して,血流感染症を発症する。原因真菌にはCandida albicansなど,数種類が知られている。そのカンジダ属のひとつであるCandida auris(C. auris)の院内感染が世界中で問題となっている。
C. aurisは2009年にわが国の帝京大学医真菌研究センターの槇村浩一教授によって初めて分離された菌であり,欧米では「日本発の恐怖の真菌」と呼ばれている。それ以降,韓国さらに欧米でも続々と報告されている。その死亡率は報告によって差があるものの,高いものでは60%以上であることから,恐怖の真菌と呼ばれている。また,諸外国から分離された菌は第一選択薬であるアゾール系薬やエキノキャンディン系薬に耐性を示す株が多く,治療が困難である。C. aurisは病院環境中に長期間生息し,環境中からの除菌が困難であることからアウトブレイクの報告も多く,その感染対策の難しさも「恐怖の真菌」と呼ばれる所以である。
既に欧米の複数の医療機関からアウトブレイクが報告されており,ヒトの常在真菌であるため,20年の東京五輪など今後,外国人の訪日に伴って,持ち込まれることも想定されることから,わが国で発見されたこの真菌が,わが国で蔓延しないための対策が急務である。
【参考】
▶ Sears D, et al:Int J Infect Dis. 2017;63:95-8.
【解説】
前﨑繁文 埼玉医科大学感染症科・感染制御科教授