厚生労働省は11日の「医師の働き方改革に関する検討会」に、2024年4月から適用される医師の時間外・休日労働規制の上限時間数の案を示した。全ての診療従事勤務医に適用する基本水準を「年960時間、月100時間」(A)、地域医療を確保する観点から医療機関を特定した上で適用する暫定的特例水準を「年1900~2000時間、月100時間」(B)とし、集中的な技能向上が必要となる医師を念頭に別の水準(C)も設定する。Bについては、医師需給の動向を踏まえつつ35年度末までの解消を目指す。上限時間数の議論は次回以降も継続する。
同日の検討会では、今年3月の取りまとめに向けた「骨子案」について議論し、その場で修正の上、了承した。骨子では、医師の労働時間短縮・健康確保と医療提供体制の維持を両立させるため、▶労働時間管理の適正化、▶タスクシフティングの推進、▶勤務間インターバルによる睡眠の確保―などの取り組みの方向性を明示している。
上限時間数は厚労省が骨子を踏まえて提案したもの。A、B、Cいずれにおいても、管理者には上限を超えた場合の面接指導と就業上の措置を義務づける。さらに追加的健康確保措置(連続勤務時間制限28時間、勤務間インターバル9時間確保、代償休暇)を、Aでは努力義務、BとCでは義務として規定する。
B案の上限を月換算すると、いわゆる過労死ラインの2倍(月平均約160時間)の時間外労働を許容する形となるため、検討会で労働組合の構成員は「長すぎる」と反発。一方、厚労省研究班の調査では、年1920時間以上の時間外労働となっている医師が約1割おり、「そうした医師に救われている命があるという現実も直視すべき」(千葉大病院長・山本修一構成員)との声も上がった。