日本医師会総合政策研究機構(日医総研)は10日、国のレセプト情報等データベース(NDB)を用いて慢性硬膜下血腫のエビデンスを探索した研究報告書を公表した。患者数が超高齢者を中心に増加しており、従来リスク要因とされている抗凝固薬や抗血症板薬以外にも発症に影響を及ぼす可能性のある薬剤があることが示唆された。
2010年と16年における慢性硬膜下血腫除去術のレセプト件数の集計結果によると、慢性硬膜下血腫の患者数は10年の3万2978人から16年の3万6375人まで増え、特に85歳以上では1.3~1.5倍に増加していた。10万人当たりの年間患者数(16年)は男性39.4人、女性18.5人で、従来言われてきた発生頻度(10万人当たり1~2人)を大きく上回っていた。発症は従来男性に多いとされているが、患者全体に占める男性の割合は66.9%(16年)で、年齢とともに女性の割合も高まり、90歳以上における男女比はほぼ1対1だった。
薬剤の使用状況については、15~16年の2年間のデータを分析。その結果、①抗凝固薬・抗血症板薬、②ふらつきを生じやすい抗てんかん薬、③催眠鎮静薬・抗不安薬、④前立腺用薬―の使用患者では、不使用患者に比べ、慢性硬膜下血腫の発症頻度が有意に高いことが分かった。報告書では、これらの薬剤の使用に当たっては「治療し得る認知症ともいえる慢性硬膜下血腫の発症リスクが高まっていることを念頭に置くことが重要」としている。
このほか、術後療法の分析では、五苓散または柴苓湯の使用例が増加していることも明らかになり、使用者割合は10年の8.4%から16年の28.2%まで上昇していた。