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いま感染症を知る大切さ(西條政幸 国立感染症研究所ウイルス第一部部長)【この人に聞きたい】

No.4947 (2019年02月16日発行) P.8

西條政幸 (国立感染症研究所ウイルス第一部部長)

登録日: 2019-02-14

最終更新日: 2019-02-13

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グローバル時代の感染症は「入っている」を前提に考えて。
患者・家族の言うことを簡単に排除せず、
知識と柔軟な発想で対応してほしい。

さいじょう まさゆき:1987年旭川医大卒。91年同大大学院修了。87~97年を小児科医として勤務。95年から1年間JICAザンビア感染症対策プロジェクトに参画。97年に国立感染症研究所に研究員として着任。2010年より現職。研究領域はウイルス性出血熱の診断と疫学など。近著に『グローバル時代のウイルス感染症』(編著、日本医事新報社)、『ステップアップ微生物学ノート』(サイオ出版)

デング熱、ジカ熱、麻疹、エボラウイルス病──。世界各地で発生する新興・再興のウイルス感染症がグローバル時代の人類の健康を脅かし続けている。外国人観光客が増加の一途を辿り、東京五輪などの大規模国際イベントを控える日本で、臨床医はウイルス感染症にどのように対峙すればよいのか。国立感染症研究所ウイルス第一部部長の西條政幸氏に話を聞いた。

ずっと存在していたSFTS

─日本の一般医でもエボラウイルス病などを診る可能性が高まっているのでしょうか。

エボラウイルス病やマールブルグ病など感染症法上の一類感染症の患者さんが日本に入ってくるのを心配するのは現実的ではありません。エボラウイルスとマールブルグウイルスは接触感染経路でしか感染しないので、日本人がアフリカへ行っただけで感染することはありません。国内の一般医が「明日エボラ患者が来るかも」と身構えても杞憂に終わるでしょう。

一方、2013年1月に国内初の患者が報告されたダニ媒介性のSFTS(重症熱性血小板減少症候群)は、この6年間で約400人の患者が確認されており、致命率は20%を超え非常に高い。その特徴はクリミア・コンゴ出血熱とよく似ています。誰も知らなかっただけで日本にも一類感染症のような疾患はずっと存在していたのです。

SFTSの知見はクリミア・コンゴ出血熱に応用でき、その逆もまた然りです。日本で発生報告がない感染症でも、まずは知ることが大切だと言えます。それはインフルエンザやかぜ症候群、下痢症などを知ることにもつながります。

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