【合併症で有意差を認めた】
デクスメデトミジン(DEX)は鎮静・鎮痛効果を有する選択的α2受容体アゴニストであり,先天性心疾患(CHD)患児への呼吸・循環に有効な麻酔薬である。いくつかの小規模単一施設では,CHD患児の周術期管理におけるDEXの効果は示されているが,対象年齢や手術術式の複雑さ,施設全体でのDEX投与量の違いを考慮した多施設研究は少ない。2016年のAnesthesia & Analgesia誌に掲載された「CHD患児の周術期管理における患者・施設レベルでのDEX投与の多様性」について,詳述する。
対象は2010~13年のCCAS-STSに登録されている人工心肺使用下の手術を受けた患児で,患者,手術術式,DEXの術中投与の有無,DEX投与に関連した転帰を1万2142件の手術で調査した。その内訳は,DEX投与群3600件(29.6%)と非投与群8542件(70.4%)であった。DEX投与群で,患者と手術術式のリスクはいずれも低く,非投与群に比べてSTAT mortalityスコアがより低い結果であった。さらに,DEX投与群は,非投与患者に対して院内死亡率(1.33% vs. 4.11%),不整脈発症率(12.7% vs. 20.8%),術後神経障害(1.3% vs. 22.7%),人工呼吸器装着時間(中央値:6時間 vs. 23.5時間)と様々な合併症で有意差を認めた。
以上から,DEX投与群の周術期合併症発生リスクがより低くなるという結果となった。また,DEXは複雑ではないCHDを持つ年長で体格の大きい患児に対して投与されていた。今後はSTAT mortalityスコアの高い患児へのDEX使用についてさらなる検討が必要であろう。
【参考】
▶ Schwartz LI, et al:Anesth Analg. 2016;123(3): 715-21.
【解説】
澤下泰明 札幌医科大学麻酔科