AED(自動体外式除細動器)の日本導入の立役者。現在も普及啓発の戦略を練り続ける。
不整脈の起こり方や心臓の動きを二次元で表す心電図の「幾何学的」な点に惹かれ、不整脈のメカニズムや有効な治療・予防法を研究しようと循環器領域に進んだ。しかし心室細動は突然発症し、高リスク者の選別や予防介入も難しい。新薬の登場でも救命率は上がらず「病院と研究室の限界」を感じ始めた。
AEDに出会ったのは慶大教授に就任した1999年。患者が見せてくれた米国紙で活用例を知り、「市民による除細動が心臓突然死を減らす」と確信。国内導入に乗り出した。
世界では有効性を示す研究が有力誌に発表され、旅客機への設置が進むなどしていたが、国内では「市民による除細動」を多くの医師が危険視し、国も「医師でなければ医業をなしてはならない」という医師法17条を理由に否定的だった。これに対し「解禁が1日延びるだけで200人が亡くなる」と、日本循環器学会に委員会を立ち上げ、有効性と安全性、法的にも問題のないことを確かめ、声明を発表。官邸にメールを送り、省庁・医師会のトップに会うなど手を尽くした。熱意が通じ、市民の使用が認められたのは2004年だった。
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