同協会の調査は昨年10月に会員の開業医3364人と開業歯科医2390人を対象に、アンケート票を郵送する形で実施。開業医は690人が回答した(回答率20.5%)。
調査結果によると、診療のほかに、在宅医療の夜間出勤・オンコール待機や経営関連業務などを含めた、週当たりの総労働時間が「60時間超」の開業医は全体の25.2%(174人)を占め、「100時間超」との回答も8.6%(59人)に上った(図)。
週当たりの実質休日数では、「2日」が27.7%(191人)、「1.5日」が14.3%(99人)などとなっており、3割以上は1日以下だった。労働の過重感については、過半数の51.9%が「過重」と回答し、精神的なストレスについても約半数(50.7%)が「強い」とした。直近1年間に健康診断を「受けていない」との回答も約3割に上った。
同協会政策部長を務める協同ふじさきクリニック(川崎市)の桑島政臣医師は「地域包括ケアは、病院の医師だけでなく開業医もどんどん地域に出て、在宅医療や看取りに関わることが大前提。24時間365日体制の在宅医療を提供する上では、急変などに対応するため在宅医の『待機時間』がどうしても発生するが、これを把握して評価する仕組みはない」と指摘する。
ただし、開業医の時間的拘束を完全に把握することには困難を伴う。そこで桑島氏は、在宅関連の診療報酬点数に「拘束時間」を評価する観点を入れることを提案する。「開業医の高齢化傾向を考えると、若い医師にももっと在宅医療をがんばろうと思ってもらえる評価方式が必要ではないか」(桑島氏)。
政府の「過労死等防止対策白書」(2018年版)によると、病院勤務医の約6割が、時間外労働の増加の要因として「診断書やカルテ等の書類作成」を挙げている。書類に追い立てられているのは開業医も同様だ。作成を求められる書類は、要介護認定の主治医意見書、訪問看護指示書、療養費関連の同意書・診断書、生活保護の医療要否意見書など多岐にわたる。しかし、看護師と医療事務がそれぞれ1~2人程度という“平均的な診療所”ではなかなか書類作成のタスクシフティングを進めにくい。
桑島氏は「高齢患者を多く診ている先生ほど書類に悩まされている」とし、特に主治医意見書については、介護認定審査委員会のあり方を含めて「見直しが必須」と強調する。また「診療情報提供書など医師以外に任せられない書類も多いが、ICT化で少しは楽になっている。ただ、おむつ使用証明書など医師が書く必要性に疑問を感じる書類も多い」とも話し、書類の合理化を訴える。
日本医学会連合は2月14日に「医師の働き方改革に関する声明」を発表した。その中では、厚労省検討会の議論が専ら病院医師に焦点を当てていることに触れた上で、診療所医師も併せた医療提供体制全体について「具体的な解決策の検討が必要」としている。
勤務医の働き方改革の議論は、3月中にも結論が出る見込みとなっている。厚労省は規制適用までの5年間で、できるだけ多くの医療機関が年960時間の時間外労働(週換算で労働時間60時間以内)に収まるよう、各医療機関に計画的な労働時間短縮を求めていく方針だ。
医師の働き方改革と地域包括ケアの構築を両立し、医療・介護ニーズが最大となる2025年を乗り越えるには、地域の開業医の負担と疲弊にも配慮した対策が不可欠と言えるだろう。