ステロイド治療に関連する感染症は,一般にその用量や投与期間が増えるほどリスクが上昇するが,低用量や短期間の治療でも感染症リスクは上昇する
ステロイド治療に関連して生じる日和見感染症も,一定以上の用量や投与期間によってリスクが上昇するが,低用量長期投与や高用量短期投与での発現にも留意する必要がある
ステロイド減量中,中止後の免疫再構築症候群(IRIS)に対する注意が必要である
このようなステロイド治療下に発現する感染症の種類や重症度は,患者背景や基礎疾患にも影響されるため,それらの因子の把握が重要である
グルココルチコイド(glucocorticoid:以下,ステロイド)は,その抗炎症作用や免疫抑制作用から,炎症性疾患,自己免疫疾患やリウマチ性疾患などの様々な疾患の有効な治療薬として投与される。しかし,ステロイド治療中には感染症の併発がしばしば経験される。このような感染症は,疾患の適切な治療を妨げたり,患者の生命予後に影響したりする大きな問題点である。生体の微生物に対する防御機構には,その侵入に対する物理的なバリアとしての正常な皮膚・粘膜の存在,食細胞などによる非特異的な免疫応答による微生物の排除(自然免疫),微生物が感染した後にそれに特異的に誘導されるリンパ球を主体とした細胞性免疫や液性免疫といった獲得免疫が重要な役割を果たす1)。ステロイドは,このような防御機構のいずれに対しても抑制的に作用するため,様々な感染症を誘発する可能性がある。