【質問者】
杉江和馬 奈良県立医科大学脳神経内科学講座教授
【マイオスタチンの作用を抑制する治療戦略に注目】
様々な筋疾患において,筋肉量が減少するとともに筋力が低下し,ADLが障害されてきます。筋疾患の治療においては根本的な病態の改善とともに,失われた筋肉量を増やす治療も必要となります。また筋疾患だけではなく,加齢などの要因に伴う筋肉量の減少であるサルコペニアも,生命予後を規定する重要な因子であることが明らかになってきました。
健康成人においては筋肉量を維持・増加するには栄養(アミノ酸やビタミン)と運動が有効ですが,筋疾患の患者や高齢者では必ずしも十分な効果が得られません。そこで,萎縮した筋肉量を増やす治療薬の開発が期待されています。
世界的にも注目されているのが,マイオスタチンという蛋白質の作用を抑制する治療戦略です。我々の筋肉量は,これを増やすシグナルと抑制するシグナルとのバランスによって決められていますが,マイオスタチンは骨格筋特異的に発現するTGF-βファミリー分子で,筋肉量を抑制する最も重要なシグナルです。マイオスタチン遺伝子をノックアウトしたマウスは,筋肉量が2倍に増加します。また,肉牛や肉羊の中にはマイオスタチン遺伝子変異を持ち,筋肉量が倍加した家畜もいます。実はヒトでもマイオスタチン遺伝子変異により筋肉量が顕著に増大した小児例が報告されています。
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