急性期の帯状疱疹の痛み(帯状疱疹痛)と慢性期の神経痛の痛み(帯状疱疹後神経痛)とでは痛みのメカニズムが異なるため,発症からの期間を考慮した治療選択が必要である
帯状疱疹や帯状疱疹痛の積極的な治療は,帯状疱疹後神経痛の発症を抑制させる可能性がある
帯状疱疹後神経痛の主な性質は神経障害性疼痛であり,「神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン 改訂2版」をもとに,プレガバリンやデュロキセチン,トラマドール製剤などの薬剤を活用する
発症から比較的早期の帯状疱疹後神経痛の症例では,神経ブロックやパルス高周波法,脊髄刺激療法などが奏効する場合がある
漢方薬は,神経障害性疼痛の治療に用いる薬物を,副作用のため十分に投与できないことが多い高齢者において特に有用である
2019年に神経障害性疼痛に有効なミロガバリンが,2018年に乾燥組換え帯状疱疹ワクチンが発売され,帯状疱疹後神経痛の治療や予防の発展が期待される
帯状疱疹関連痛(zoster-associated pain:ZAP)は,皮疹発症前に生じる痛み(前駆痛または先行痛)および帯状疱疹急性期の痛み(帯状疱疹痛),慢性期の神経痛の痛み(帯状疱疹後神経痛)を合わせたもので1)2),その中で高齢者において最も問題となるのは帯状疱疹後神経痛である(図1)3)。
帯状疱疹はヘルペスウイルス科に属する水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)によって生じ,初感染では水痘(水疱瘡)として発症する。
水痘の治癒後に知覚神経節にウイルスが潜伏感染し,再活性化したときに神経支配領域に沿った皮疹が発症する。その際に生じた皮膚や神経の炎症が,前駆痛や帯状疱疹痛の原因となる。
顔面の帯状疱疹は三叉神経節で,それ以外は脊髄神経節で再活性化し,通常デルマトーム1箇所の片側に皮疹が生じ,一部の症例で皮疹治癒後に帯状疱疹後神経痛に移行すると考えられている4)。