日本小児科学会の前身である小児科研究会が設立されたのが明治29(1896)年、小児科学会と名前を変えたのは明治34(1901)年だそうです。一方、第1回の日本救急医学会が開催されたのは昭和48(1973)年で、なんと開催地は私の地元神戸だったそうですね。小児科学と比べても、救急医学は意外と若い学問であることがわかります。そういえば、私が研修医だった頃は多くの病院で「救急外来」はあっても「救急専門医」なんていませんでした。当直医が困ったら専門科のオンコール医を呼び出す……。患者は、自分の病気の専門分野の医師が当直だったらラッキーという時代でしたね。
その後、救急医療の重要性が叫ばれるようになり、地域の中核病院には次々と「救急部」が設立されたわけですが、残念なことに、子どもの救急医療はこの流れから取り残されてきました。何しろ対象となる患者の数、疾患の種類からみても成人が主なターゲットになるわけで、「何でも初期対応します。ただし子ども以外」という救急部が多かったように思います。取り残された小児救急の領域で不幸な事件が重なったこともあり、地域の小児科医はなんとか自分たちだけで救急体制をつくりあげようと努力してきました。しかし、結果として編み出された二次輪番制度は十分に機能しているとは言えず、小児科医の疲弊をまねいています。小児患者のたらい回しもなくなったわけではありません。夜間の急変に対する漠然とした不安が不要な抗菌薬投与など過剰診療の原因となっているという側面も否定できないと思います。
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