【質問者】
砂田芳秀 川崎医科大学神経内科学教室教授
【補体C5に対するモノクローナル抗体製剤エクリズマブ】
ギラン・バレー症候群(Guillain-Barré syndrome:GBS)は先行感染の1~2週後に急性発症する自己免疫性末梢神経障害であり,先行感染因子と末梢神経の構成成分との分子相同性による発症が推定されています。
GBSは現在,脱髄型と軸索型の二大病型に分類されていますが,特にカンピロバクター腸炎後に発症する軸索型GBSの標的分子はガングリオシドGM1,GD1aであり,菌体外膜上にガングリオシドが発現する菌種の感染があった場合に,ガングリオシドに対する自己抗体が産生されて,末梢運動神経の軸索膜に発現するガングリオシドに交叉反応することがほぼ証明されています。脱髄型GBSの標的分子はいまだ明らかにされていませんが,シュワン細胞膜に免疫グロブリン・補体の沈着が示されていることから,自己抗体を介して補体の活性化が起こっていることが推定されています。すなわち現在の理解ではGBSは自己抗体依存性に疾患が発症するとされています。
GBSに対する治療法として1980年代に血漿交換療法,1990年代に免疫グロブリン療法による大規模臨床試験が複数行われており,これらの治療により回復のスピードを速めることが証明されています。ただし,これらの治療を行っても死亡率は3~5%(主に呼吸筋麻痺に伴う重症肺炎のため),1年後に独立歩行不能例が20%存在することが大きな問題点として挙げられており,特に呼吸筋麻痺や四肢完全麻痺を呈する重症例を救済するために,より効果の大きい治療が探査されてきました。
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