【質問者】
藤田崇宏 北海道がんセンター感染症内科
【薬物相互作用に注意してフォロー】
治療レジメンの切り替えは,抗ウイルス薬の副反応,患者のライフスタイル,耐性など様々な理由があります。レジメン変更の際には医学的に緊急性のある場合を除き,変更する理由,メリット,デメリット,長期毒性も含め患者との話し合いで十分な理解を得られるようにしています。また切り替えのタイミングと本人の重要なイベント(仕事の繁忙期や出張など)がバッティングしないようスケジュール確認を必ず行います。切り替えを発端にアドヒアランスが悪化した経験もあり,切り替え自体が負荷にならないよう留意しています。
TDF/FTCからの切り替えでは,キードラッグも同時に変更する場合やコビシスタット(Cobi)がブースターとして新たなレジメンに加わることもあるかもしれません。筆者の診療においてもTAF/FTCへの変更後に尿中β2ミクログロブリン,シスタチンなどの代理マーカー,クレアチニンクリアランス(creatinine clearance:Ccr)の一部/すべてが改善,長期的に振り返れば腎障害が悪化しない,もしくは進行が緩徐になるものなど様々です。何らかの事情でTDF/FTCを継続する際には,TDFの長期曝露は慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)増加に関与1)することからも,年3~4回は簡便な腎機能評価2)〔尿蛋白,その他の代理マーカー,推定糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate:eGFR)がベースラインから25%低下していないか〕を行っています。
その裏付けとして,長期に安定,かつmean eGFR 110mL/分/1.73m2前後を対象としたエルビテグラビル(EVG)/Cobi/TDF/FTCからEVG/Cobi/TAF/FTCへの切り替え研究3)では,TAF群での骨代謝,蛋白尿の有意な改善を認めている一方で,TAFもしくはTDF由来の副作用についてはTAF:TDF=21%:16%と悩ましい点もあります。
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