1本の電話から始まる税務調査。調査が決まったときには、もう手遅れかもしれません。なぜなら、税務調査は過去の申告に対して行われるもの、既に経費として落としてしまった領収書の「言い訳」にも限界があります。税務調査は、開業以来10年以上も入っていなかったのに、突然入るということもあります。開業医に対する税務調査はどのような流れで行われ、どのようなことが問題になるのか、あらかじめ分かっていれば落ち着いて対応できます。税務調査の手続きから指摘されるポイントまで、分かりやすく解説します。
税務調査でひどい目に遭ってしまうのではないか─。そんなイメージをお持ちかもしれません。いったい何をどこまで調べられるのか、その不安を払拭するためには、税務調査官の権利と義務を知っておくことが必要です。
税務調査において税務調査官に認められた権限、それが「質問検査権」です。納税者に対して、質問したり、検査したりすることができる権限のことです。権限があるとはいえ、税務調査官に言われるがまま従ってしまえば、机の引出しの中身や、手帳または金庫の中身まで見られてしまうことにもなりかねません。
税務調査官には質問検査権があるとはいえ、通常の税務調査は「強制調査」ではなく、あくまでも「任意調査」です。税務調査官は、納税者のプライバシーを尊重し、営業妨害や信用失墜とならないような配慮が必要とされています。
例えば、院長室や職員休憩室などの私的スペース、かばんの中身、キャビネットの中身、机の引出しの中、金庫の中、手帳などは、「明らかな承諾」なしには検査されないことになっています。うやむやに聞かれて、こちらが黙っていたことで、これを承諾されたとみなして検査する、といった行為も不可とされています。当然のことながら、診療中にもかかわらず診療スペースに入ってきて患者さんに悪い印象を与えたり、取引先への反面調査で信用不安を煽ったりすることも許される行為ではありません。
色々な場所を検査されないためにも、質問検査権の対象となる帳簿書類などを、税務調査官から求められればすぐに出せるようにしておきたいところです。税務調査当日には以下のような資料をあらかじめ準備しておくとよいでしょう。