【筋萎縮性側索硬化症ではRNA顆粒の形成障害が起こる】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は,運動神経の変性によって全身の骨格筋の筋力低下が生じる疾患であり,根本的治療法は確立されていない。一部の家族性および孤発性ALSでは,TDP-43,FUS,hnRNP A2/B1,TIA1といったRNA結合蛋白質の遺伝子変異が同定され,さらに,遺伝子変異のない例を含め,大部分のALSでこれらの蛋白質の核から細胞質への局在変化と異常沈着が認められる。
これらの知見より,神経細胞内でのRNA結合蛋白質の局在・機能変化に伴う,RNA代謝異常とALSの病態との関連が推測されている。その1つの要因として,RNA顆粒の形成障害が注目されている。RNA顆粒とは,核から出た成熟RNAを細胞質内で保持するRNA─RNA結合蛋白質複合体であり,飢餓や酸化ストレス時にRNAの蛋白質への翻訳を回避するストレス顆粒,神経突起でRNAを輸送する神経RNA顆粒などが知られている。上記のRNA結合蛋白質は,いずれもRNA顆粒の構成蛋白質であり,ストレス顆粒の形成時にこれらの蛋白質が共通に保有するprion-like domainを介して互いに会合・凝集すること,ALS関連変異型では蛋白質凝集性が亢進し,ストレス顆粒の形成能が低下することが報告されている1)。
今後,これらの機能障害とALSの病態との関連について,より詳細な解析が待たれる。
【文献】
1) Mackenzie IR, et al:Neuron. 2017;95(4):808-16.
【解説】
長野清一*1,望月秀樹*2 大阪大学神経内科 *1准教授 *2教授