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■NEWS 【認知症施策推進大綱】「共生と予防」を車の両輪に、数値目標は参考値へ―予防は「発症・進行を遅らせる」

No.4966 (2019年06月29日発行) P.67

登録日: 2019-06-19

最終更新日: 2019-06-19

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認知症対策の強化に向け、政府は6月18日の関係閣僚会議で「認知症施策推進大綱」を決定した。認知症の発症を遅らせ、発症後も希望を持って日常生活を過ごせる社会を目指し、車の両輪に「共生」と「予防」を据えた。素案で「70代での発症を10年間で1歳遅らせる」などとしていた予防に関する数値目標は、施策を進めた結果として達成される参考値扱いとした。

大綱は2015年策定の「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)の後継に当たるもの。対象期間は、団塊の世代が75歳以上になり、認知症有病者数が最大730万人に達すると見込まれる2025年まで。普及啓発、予防、医療・ケア・介護サービス、認知症バリアフリー、研究開発などの分野で取り組む施策について、主要業績評価指標(KPI)や目標を定めた(表)。

■認知症は「だれもがなりうるもの」

大綱では認知症を「だれもがなりうるもの」と明記。「共生」とは「尊厳を持って認知症と共に生きる/認知症があってもなくても同じ社会で生きる」という意味であるとし、生活上の困難が生じても、本人が住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けられる社会の実現を謳っている。予防の定義は「認知症になるのを遅らせる/進行を緩やかにする」とし、「認知症にならない」との意味ではないと強調した。

政府は5月の素案段階で「70代での発症を10年間で1歳遅らせる」との数値目標を設け、これを有病率に置き換えて「6年間で相対的に6%低下させる」と掲げていた。しかし、当事者団体や与党内から、予防を前面に押し出しすぎることで偏見や自己責任論が惹起されるなどと憂慮する声が上がり、最終案までに目標から参考値へ格下げされた。車の両輪に位置づけた「予防」と「共生」の順も素案から変更され、共生が先になった。

■認知症予防、WHOは運動・禁煙など「強く推奨

認知症予防に関するエビデンスは、現状では十分とは言えない状況だ。しかしながら近年、①運動不足の改善、②糖尿病や高血圧症等の生活習慣病の予防、③社会参加―などが発症の遅延につながると示唆する研究が国内外で報告されている。世界保健機関(WHO)が5月に公表した、認知症予防のエビデンスをまとめたガイドラインでも、各種介入のうち運動と禁煙、そしてWHO指針に沿った降圧と糖尿病治療を「強く推奨」している。社会参加については予防目的でのエビデンスは不十分ながら、社会的な交流と支援が「生涯を通じて健康と幸福に強く関連している」とし、重要性を認めている。

これを踏まえ大綱では、日本における予防に関するエビデンスを収集・蓄積し、活動の手引きやガイドラインにまとめて普及するとしている。発症後の行動・心理症状(BPSD)の予防についても、ガイドラインや治療指針の作成を目標に盛り込んだ。

■認知症センター、2次医療圏に1カ所以上整備へ

主な施策目標のうち予防に関するところでは、公民館等で高齢者向けに介護予防のための体操等を行う「通いの場」への参加率を高齢者人口の8%程度まで高めるとしている。厚生労働省の調査(17年度)では、通いの場は全国9万以上あるが参加率は4.9%となっている。

医療・介護サービスについては、20年度までに認知症疾患医療センターの設置数を全国500カ所、2次医療圏ごとに1カ所以上整備するとした。今年5月時点での設置数は449カ所。認知症対応力向上研修受講者数の目標は、かかりつけ医9万人、認知症サポート医1.6万人などとした。本人と家族が地域で受ける医療・介護サービスの流れを示した「認知症ケアパス」の積極活用も打ち出し、市町村における作成率100%を目指す。

このほか、今年3月現在約1144万人となっている認知症サポーターの養成数は、20年度までに1400万人を目指す。研究開発の分野では、日本発の認知症の疾患修飾薬候補の治験開始や薬剤治験に即応できるコホートの構築などを掲げた。

表 主なKPI/目標
・認知症サポーター養成数1200万人(20年度)
・介護予防に資する「通いの場」参加率8%程度
・成人の週1回以上のスポーツ実施率65%程度
・認知症予防のエビデンスを整理した活動の手引き作成
・認知症初期集中支援チームの訪問から医療・介護につながった者の割合65%
・市町村における認知症ケアパス作成率100%
・認知症疾患医療センター設置数500カ所(20年度)
・医療・介護従事者の認知症対応力向上
・BPSD予防に関するガイドラインや治療指針の作成
・日本発の認知症の疾患修飾薬候補の治験開始

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