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遺伝性炎症性腸疾患(IBD)

No.4973 (2019年08月17日発行) P.56

白石 暁 (九州大学小児科)

園田素史 (九州大学小児科)

大賀正一 (九州大学小児科教授)

登録日: 2019-08-18

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【乳幼児のIBDでは単一遺伝子疾患の頻度が高い】

炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)は腹痛,下痢,成長障害を特徴とする重篤な疾患である。クローン病と潰瘍性大腸炎が主体であり,診断がつかないものはindeterminate colitisと分類される。IBD全体の25%が18歳未満に診断され,私たち小児科医は成長に関わる疾患として診断と治療を厳格に行う必要がある。

IBDの病因・病態には免疫学的な要因と環境因子が関与すると言われているが,詳細な発症機序はいまだ明らかではない。腸内細菌叢の異常とIBD発症の関係も報告されている。

近年,遺伝子解析方法の進歩によりIBDの疾患関連遺伝子が200以上報告されている。これには宿主の免疫応答に関わる遺伝子が多い。特に乳幼児に発症するIBDでは単一遺伝子疾患(monogenic disease)の頻度が高い。乳児期から小児期にかけて発症するIBDのうち,基礎疾患として原発性免疫不全症が見つかることもある1)。原発性免疫不全症から見るとIBDを発症する小児疾患にはしばしば遭遇し,慢性肉芽腫症では造血幹細胞移植により,食細胞機能も炎症性疾患も治癒に至る場合がある。

IBDの診療には常に基礎疾患の有無を考慮し,特に早期発症例や非典型的なIBDには原発性免疫不全症を疑って精査する必要がある2)

【文献】

1) Teranishi H, et al:Rinsho Ketsueki. 2017;58 (1):20-5.

2) 白石 暁, 他:福岡医誌. 2017;108(4):131-8.

【解説】

白石 暁,園田素史,大賀正一  九州大学小児科 *教授

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