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機能性とデザイン性を兼ね備えた、開放感のあるクリニックを実現[クリニックアップグレード計画 〈医院建築編〉(9)]

No.4978 (2019年09月21日発行) P.14

登録日: 2019-09-20

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クリニックの設計においては、医療機関としての機能性と空間の快適性を両立することが求められる。院長のイメージする理想のクリニックを具現化するためには、豊富なノウハウを持つ設計・建築会社をパートナーに選ぶことが重要になる。連載第9回は、院長の掲げる理念と部屋数・設備などの条件のヒアリングから設計士がインスピレーションを得て設計し、院長が満足する空間づくりに成功した事例を紹介する。

横浜市にある「宮澤内科・呼吸器クリニック」は、東急田園都市線たまプラーザ駅から徒歩3分のビルの1階に2019年5月、開設された。宮澤輝臣院長は国内の呼吸器内視鏡治療のパイオニア的存在で、世界気管支学会会長、日本呼吸器内視鏡学会会長を歴任したキャリアの持ち主。聖マリアンナ医科大学では呼吸器内科主任教授を約10年にわたり務めた。臨床に加え、教育や研究に取り組む充実した日々を送っていたが、「もっと近い場所で患者さんと接したい」との想いが年々強まってきたという。

「そんな折に患者さんから『たまプラーザ駅の近くに呼吸器専門のクリニックがないので先生に開業してほしい』というありがたい声をいただくことが多くなり、開業を決意しました」(宮澤院長)

一面貼りの大理石調タイルを待合室に採用

宮澤院長のモットーは「弱いものに寄り添い、優しい気持ちで診療」。開業に当たり、呼吸器に問題を抱えてくる患者がより良い環境で安心して診療を受けてもらえるクリニックを目指した。

設計プランの提案を受けた複数の業者の中から「圧倒的に優れたプラン」と評価し、設計・施工を依頼したのが、医療機関に特化した設計事務所リチェルカーレ(http://www.ricercare.co.jp/)。リチェルカーレは全国に900件を超える医院建築の実績を持ち、動線などの機能性と高いデザイン性を兼ね備えたクリ ニックを、限られた予算内で実現する提案力に定評がある。

宮澤院長が「決め手だった」と語るのは、3m近い高天井を生かすべく、待合室奥の壁面に一面貼りで大理石調のタイルを採用し、明るく清潔で洗練された印象を持つ空間をダイナミックに演出した点。シンボリックかつアイキャッチな存在感のあるインテリアとして、シンプルな空間にアクセントを加えている。

「患者さんに寄り添う」想いを具現化

同院はいわゆる“ビル診”で物件面積自体は約100㎡と決して広くはないが、高天井の効果に加え、エントランスから待合・受付エリア、診察室をつなげるメイン通路を広め(2m以上)に設けているため、開放感がある。照明はシンプルなダウンライトにし、温かいウッド調の床や建具との組合せが柔らかな印象をクリニック全体に与えている。ゆったりとしたオフホワイトのデザイナーズソファに腰をかけ、待ち時間を快適に過ごすことができる。

同院の設計のポイントについてリチェルカーレの担当設計士はこう語る。

「患者さんに寄り添う、という宮澤先生の想いをデザインに落とし込むことを心がけました。設計コンセプトのキーワードは、洗練、明るさ、開放感、ストレスフリーなどです。例えば患者さんにくつろいでもらうために、内装や素材選びのプロセスでは、あたかも自然光が入り込んでいるかのような空間づくりを意識しました。またスタッフの方と患者さん双方に長く使ってもらうことができるよう、シンプルで飽きのこないタイムレスなデザインを目指しました」

スタッフの健康管理にも配慮した設計

機能面では、患者とすれ違うことを極力避けるためバックヤードにスタッフの動線を確保(図)。X線撮影室を処置室の横に配置するなど医師と患者の動きを想定したレイアウトになっている。

同院の設計で特徴的なのは、宮澤院長の要望を踏まえ、スタッフの健康管理に配慮されたレイアウトになっている点。院長室、医局、スタッフルームには高天井を活用したロフトスペースに仮眠用のベッドを設置した。シャワールームもあり、多忙な業務の間にリフレッシュができるような環境が整っている。

安心して治療を受けてもらえる環境を

モストグラフや呼気中一酸化窒素ガス分析装置など患者の負担が少ない最新の医療機器を揃え、専門医による呼吸器全般の高度な診療が受けられることが評判を呼び、集患は順調だという。

「開業医として心がけているのは、地域の患者さんの健康を日常的にサポートしていくということです。そのためにも患者さんに『また来たい』と思ってもらえるような居心地のよさが大切だと感じています。当院では院内感染防止を徹底しており、隔離室の確保はもちろん99%除菌ができる高機能空気清浄器を院内に6台配置しています。清潔でくつろぐことができ、安心して治療を受けてもらえるような環境を今後も整えていきたいと思います」(宮澤院長)

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