メニエール病は反復する回転性めまい発作に聴覚症状が随伴する内耳疾患で,内リンパ水腫が病態とされる。
2017年にメニエール病の診断基準が改訂され,3項目の症状,4項目の検査所見がメニエール病の診断に必要となった。
①10分以上の回転性めまい発作を反復する,②発作に伴って難聴,耳鳴,耳閉感などの聴覚症状が変動する,③第Ⅷ脳神経以外の神経症状がない。
①純音聴力検査では感音難聴を認め,初期にはめまい発作に関連して聴力の変動を認める,②平衡機能検査ではめまいに関連する水平性または水平回旋混合性眼振などの内耳前庭障害所見を認める,③神経学的検査では第Ⅷ脳神経以外の障害を認めない,④メニエール病と類似した難聴を伴う原因既知のめまい疾患を除外できる。
症状3項目と検査所見4項目すべてを満たす場合にはメニエール病確実例と診断される。症状3項目のみの場合はメニエール病疑い例と診断される。
メニエール病の治療は,発作期と間欠期にわけられる。急性の発作期には,めまいとともに随伴する嘔気・嘔吐への対症療法が主体となる。めまいが強い場合には入院加療とする。安静を保ち,7%重曹水点滴静注,鎮吐薬,抗不安薬などを用いる。難聴が併発する場合には副腎皮質ステロイドを併用する。
間欠期には次の発作予防を目的として保存的治療を行う。メニエール病のめまい発作はストレス,過労,睡眠不足が影響するため,ストレス軽減,過労防止,有酸素運動などの適当な運動を行うなど,生活習慣について指導を行う。薬物治療としては,浸透圧利尿薬,抗めまい薬,内耳循環改善薬,抗不安薬,ビタミンB12薬,漢方薬が使用される。
保存的治療が無効でめまい発作を繰り返す難治例に対しては,従来,外科的・前庭機能破壊的治療が行われてきた。「メニエール病診療ガイドライン2011年版」では段階的治療法が示された。これは保存的治療→中耳加圧治療→機能保存的手術的治療(内リンパ囊開放術)→選択的前庭機能破壊術(内耳中毒物質鼓室内注入術,前庭神経切断術)の順に,低侵襲な治療から開始し,有効性が確認されない場合に次の段階に進む治療方針である。2018年には中耳加圧治療が保険収載された。
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