好酸球性副鼻腔炎は,鼻副鼻腔粘膜の著明な好酸球浸潤を特徴とし,ムチンと呼ばれる粘稠なニカワ状の分泌物や,多発性の鼻腔ポリープ(鼻茸)を認めることが多く,気管支喘息などの下気道疾患を伴うことも多い1)。薬物治療や外科的治療を行っても再燃を繰り返す難治性の病態のため,2015年より厚生労働省の指定難病にも認定されている。
現在は,鼻腔内の内視鏡検査所見,CTなどの画像検査所見,血液検査所見をもとにした,JESRECスコアによって診断を行っている。JESRECスコアとは,病側が両側性であれば3点,鼻茸を認めれば2点,CT陰影が篩骨洞優位(篩骨洞≧上顎洞)で2点とし,さらに末梢血好酸球の割合に応じて,2< ≦5%で4点,5< ≦10%で8点,10%<で10点とし,合計11点以上であれば好酸球性副鼻腔炎の疑いと診断する。確定診断のためには,鼻茸や副鼻腔粘膜組織中の好酸球数が強拡大1視野あたり70個以上であることを証明する必要がある。
さらに,JESREC study2)により得られた5つの因子〔末梢血好酸球の割合>5%,CT陰影が篩骨洞優位,気管支喘息の合併,アスピリン不耐症の合併,非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)アレルギーの合併〕をもとに,好酸球性副鼻腔炎を軽症,中等症,重症に分類している。なお,前述した指定難病については,中等症以上と定義されている。
EBMに基づいた治療ガイドラインはまだ存在せず,治療方針については施設間のばらつきが大きい。一般的に副腎皮質ステロイドの全身投与の有効性が示されているが,その中止により再燃する。そのため,筆者の施設では,内視鏡下鼻内副鼻腔手術と呼ばれる外科的治療によって鼻副鼻腔の病変を除去した後に,副腎皮質ステロイドの局所投与と,生理食塩水による洗浄などの局所治療によって再燃を抑制し,病態を制御している。外科的治療を行う前に,副腎皮質ステロイドの全身投与を積極的に行う施設もあるが,投与の中止による病態の再燃や,投与の継続による副作用を十分理解できない患者は,手術を受けずにその投与を希望し続ける。そのため,筆者の施設では原則として行わない。
好酸球性副鼻腔炎患者の副鼻腔には,多量の好酸球由来の顆粒蛋白や炎症性サイトカインを含んだムチンが貯留しており,これが術後早期の再燃の原因となるため,手術においては病変の完全な除去が必須である。さらに,術後の局所治療の効率を上げるため,単洞化と呼ばれる篩骨蜂巣の隔壁の除去や,各副鼻腔の十分な開放を行う必要がある。そのような手術を行い,局所治療による術後管理を厳重に行っていても,急性増悪による病態の再燃をきたすことがあり,その場合は副腎皮質ステロイドの全身投与を限定的に行っている。そのような難治性の病態の制御が今後の課題であるが,病態が類似している気管支喘息においては,抗体医薬などの分子標的治療が行われはじめており,好酸球性副鼻腔炎においても,将来的にはその効果が期待されている。
残り1,149文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する