わが国では結核罹患率は年々減少しているが,結核患者のうち80歳以上が約40%を占めている。一方で,外国出生の結核患者数が近年,増加している
高齢者では肺結核による呼吸器症状が少ないと言われるが,診断が遅れるほど進行し,診断時には排菌している症例の割合が若年者よりも多い
早期発見のためには,全身症状も含めた問診,診察が重要である
結核を疑ったら,まず抗酸菌(結核菌)検査を行う
結核菌特異的インターフェロンγ遊離試験(IGRA)は,特に高齢者では結果の解釈が難しい場合がある
2018年の結核罹患率は人口10万対12.3と年々減少しているが,医療機関などにおける結核集団感染の件数はそれほどは減っていない。病院・社会福祉施設の集団感染事例の報告数は,2016年は14件で,2003年の14件と比較しても変わらない。この間にわが国の結核罹患率は約4割減少している。
それにもかかわらずなぜ集団感染は減っていないのか?その理由は主に「診断の遅れ」による接触者への感染拡大にある。
2018年の結核罹患率は80~89歳で人口10万対51.2,90歳以上は82.8と高く,80歳以上の結核患者の割合は約40%を占める。注意すべきは,この年齢層では若年層と比較して,全結核の中の肺結核喀痰塗抹陽性患者の割合が高いことである。
すなわち,60歳未満では,周囲に感染させるリスクを有する塗抹陽性例は30~40%程度であるのに対して,80歳以上では約60%を占めている。
80歳以上の患者のうち約半数は,治療成績の判定時点で亡くなっている。結核患者の死亡理由は「発見の遅れ」と「治療困難」と言われており,高齢者では「治療困難」例も少なくない。また,結核の全国統計によると,約20%の患者が初診から結核の診断まで1カ月以上を要している。
診断の遅れは治療開始の遅れでもあるので,患者の治療成績や予後にも影響を及ぼすのである。