『「結核医療の基準」の改訂‐2018年』に示された治療法が,現在の結核標準治療である
結核指定医療機関に指定されたプライマリケア医(一般医療機関)は,結核専門医療機関と協力し,結核標準治療を行う
プライマリケア医は,保健所を中心として,それぞれの地域の特性に応じた地域DOTSを実施する
わが国の結核罹患率は徐々に低下しているが,2017年では人口10万対13.3,2018年では人口10万対12.3と,依然としてわが国は結核の中蔓延国である。わが国が他の先進諸国と同様に低蔓延国(罹患率10万対10以下)をめざすためには,早期診断と適切な治療の実践が重要となる。一方で,結核診療の専門家は決して多くはなく,地域によっては専門医による結核診療が困難な状況となっている。そのため,結核診療におけるプライマリケア医の役割は今後さらに増加していくと推測される。しかし,プライマリケア医にとって標準的な結核診断および治療の知識を得る機会は少なく,結核が今なお身近な感染症であるという認識が必ずしも普及していないのが現状である。
毎年,病院内そして施設内における結核の集団発生事例が少なからず報告されている。その原因としては,わが国における高齢社会を背景に結核発病リスクの高い患者が増加していること,そして医師による診断の遅れが挙げられる。そのため,初期診療に携わるプライマリケア医は,結核を早期診断するためのスキルを持つことが重要となる。そして,結核治療は基本的に結核専門医療機関で実施されるが,結核指定医療機関に指定された一般医療機関ではプライマリケア医による結核標準治療を提供する場合がある。また,直接服薬確認療法(directly observed treatment:DOT)を主軸とする包括的結核対策を意味するDOTS戦略(directly observed treatment, short-course)(本稿6.を参照)の重要性が近年指摘されているが1),その推進・強化のためにはプライマリケア医による支援が必要となる。これらのことから,プライマリケア医は,専門家や保健所などとともに結核診療において重要な存在であり,結核標準治療とDOTSに関する基本的な知識を持つ必要がある。