保健所は,地域における感染症対策の中核を担う行政機関であり,わが国の結核の根絶に向けて,感染症法等に基づく結核対策業務を幅広く実施している
保健所は,「日本版21世紀型DOTS戦略」に基づき,地域の医療・福祉等関係機関との連携により,結核の治療完遂を目指した患者支援を行っている
接触者健診は,初発患者の感染危険度と接触者側の感染・発病リスクの評価結果をふまえて健診の優先度を設定する。インターフェロンγ遊離試験(IGRA)等の検査で潜在性結核感染症(LTBI)を早期発見し,発病予防のための治療を行う。今後は,分子疫学手法の活用も重要である
わが国は今,結核の中蔓延国から低蔓延国への過渡期にある。世界保健機関(World Health Organization:WHO)は,2014年に「結核終息戦略(End TB Strategy)」を発表し,結核の低蔓延国はもとより,わが国を含めた低蔓延に近い国に対しても,公衆衛生学的な根絶(elimination)をめざした対策を進めるよう求めている。わが国が低蔓延国への仲間入りはもとより,その先のeliminationを目標として今後の対策を進めるのであれば,結核の新たな感染者と発病者の両方を着実に減少させる必要がある。そのためには,①「結核感染の連鎖を遮断する施策」とともに,②「潜在性結核感染症(latent tuberculosis infection:LTBI)を早期発見して発病を積極的に防ぐための施策」を推進する必要がある。
これらの施策の推進役が保健所である。保健所は,地域における感染症対策の中核を担う行政機関であり,「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)には,保健所と医療機関等との緊密な連携を前提とした結核対策が体系的に盛り込まれている。
そこで本稿では,結核対策に関する保健所の役割および医療機関との連携の重要性などについて解説する。