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慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)[私の治療]

No.4985 (2019年11月09日発行) P.46

小池春樹 (名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学准教授)

登録日: 2019-11-11

最終更新日: 2019-11-06

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  • 慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy:CIDP)は,2カ月以上にわたる進行性または再発性の経過を呈し,運動感覚障害を特徴とする免疫介在性の末梢神経疾患(ニューロパチー)である。診断は主に臨床所見と電気生理学的所見に基づいて行われ,現在ではEuropean Federation of Neurological Societies/Peripheral Nerve Society(EFNS/PNS)の診断基準が頻用されている1)

    ▶診断のポイント

    【症状】

    現在頻用されているEFNS/PNS診断基準では,2カ月以上にわたる慢性進行,階段状増悪,あるいは再発型の経過を呈し,四肢対称でびまん性の筋力低下と感覚異常をきたすものを典型的CIDP(typical CIDP)と定義している1)。また,非典型的CIDP(atypical CIDP)として,遠位優位型(distal acquired demyelinating symmetric:DADS),非対称型(multifocal acquired demyelinating sensory and motor neuropathy:MADSAM),局所型,純粋運動型,および純粋感覚型,の5種類の亜型を挙げている1)

    【検査所見】

    先に述べたtypical CIDP,DADS,MADSAM,局所型,純粋運動型,純粋感覚型といった臨床病型に照らし合わせながら,神経伝導検査,脳脊髄液検査,MRIなどの所見をあわせて総合的に診断する。EFNS/PNS診断基準では,神経伝導検査所見に基づいた電気診断基準が定められており,伝導速度の遅延,終末潜時の延長,伝導ブロック,時間的分散,F波の異常など,末梢神経の脱髄を示唆する所見を見出すことが重要である1)。脳脊髄液検査では,細胞数の増多を伴わない蛋白の上昇,いわゆる蛋白細胞解離がみられる。典型例の神経生検では節性脱髄,再髄鞘化,オニオンバルブなどの脱髄を示唆する所見と,神経内鞘の浮腫がみられることがある2)

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    CIDP患者に対する第一選択の治療としては,経静脈的免疫グロブリン療法(intravenous immunoglobulin:IVIg),副腎皮質ステロイド,血漿浄化療法があり,効果は同等と言われている1)。IVIgは効果の発現が早く,簡便に施行できることから,最初の治療として頻用されているが,一定の割合で無効例が存在することと,再発を繰り返す患者も多いことを念頭に置く必要がある。

    再発を繰り返すために頻回のIVIgが必要な患者では,脱髄による末梢神経の機能障害に加えて,不可逆的な軸索障害が徐々に蓄積して,筋萎縮や治療反応性の低下などをまねくと言われている。このような患者では,他の治療への切り替えや追加という選択肢もあるが,再発前に定期的にIVIgを投与する方法,すなわち運動機能低下の進行抑制のための維持療法の有用性も報告されており,わが国でも承認された。また,高濃度の免疫グロブリン皮下注製剤(subcutaneous immunoglobulin:SCIg)もCIDPにおける運動機能低下の進行抑制に対して有効であることが示されており,在宅での自己注射が可能なことから,維持療法の新たな選択肢となっている。

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