2017年の欧州心臓病学会で報告されたCANTOS試験ではhsCRP高値を示す心筋梗塞(MI)後慢性期例において、抗炎症療法による心血管系(CV)死亡・心筋梗塞・脳卒中抑制作用が確認された。では急性期でも、PCI施行時に生ずる炎症を抑制すれば、炎症による心筋障害を抑制し、ひいては良好な転帰が期待できるだろうか。このような疑問のもと試行されたランダム化試験 "COLCHICINE-PCI"の結果が、Binita Shah氏(ニューヨーク市立大学、米国)により報告された。
COLCHICINE-PCI試験の対象は、PCI適応判断のため血管造影を施行した虚血性心疾患714例である。経口ステロイド・NSAID服用例や、ランダム化直近24時間の間にストロングスタチン開始例は除外されている。
これらはコルヒチン群(PCIの1~2時間前に1.6g、PCI施行直後に0.6g)とプラセボ群にランダム化され、最終的にPCIを施行されたコルヒチン群(206例)とプラセボ群(194例)が比較された(いずれもランダム化された例の56%に相当)。
平均年齢は65歳強、急性冠症候群例は約半数のみだった。またおよそ4分の1に心筋梗塞既往があった。
その結果、1次評価項目である「PCI関連心筋傷害」が認められたのは、コルヒチン群:57.3%、プラセボ群:64.2%で、有意差は認められなかった(P=0.19)。「心筋障害」の定義は、血中トロポニン濃度が「基準値上限を超えた場合」、あるいは「PCI施行前から20%以上上昇した場合」である。
同様に、2次評価項目の1つである「30日間の死亡・心筋梗塞・血行再々建」の発生率も、コルヒチン群:11.7%、プラセボ群:12.9%となり、有意差は認められなかった(P =0.82)。
一方、炎症性マーカーである、IL-6とhsCRP濃度はいずれも、PCI施行後22~24時間にかけ、コルヒチン群で有意に低値となっていた(ただしそれ以前の時間帯では、IL-6とhsCRPとも両群間に差なし)。
指定討論者のSubodh Verma氏(トロント大学、カナダ)は、先述のCANTOS試験を念頭に、PCI施行前から炎症性マーカーが高値を示した例のみでの解析、あるいは安定冠動脈疾患例を除外した解析を見たいとの見解を示した。
なお現在、ST上昇型心筋梗塞例に対するPCI施行後48時間以内コルヒチン開始の有用性をプラセボと比較するランダム化試験 "CLEAR SYNERGY" が進行中で、2021年末終了予定である(NCT03048825)。
本試験は、VA Career Development AwardとAHAから資金提供を受けて行われた。