新生児遷延性肺高血圧症(persistent pulmonary hypertension of the newborn:PPHN)は,胎児循環から新生児循環への移行時期に肺血管抵抗が高くなり,胎児期の血行動態が継続し,肺血流が低下して低酸素が進行する病態である。卵円孔や動脈管での右左短絡のため高度のチアノーゼを呈し,早期に対応しなければ命の危険を伴う状態に進行する。
PPHNは基礎疾患を有する場合が多くきっかけは様々であるため,発症を疑った場合には早期に診断し対応する。疑ったら上下肢のSpO2測定を行い,上下肢差を認めたら心エコーを実施する。
肺血管抵抗の高い状態が基礎にある場合:肺低形成,横隔膜ヘルニア,dry lung syndrome,早期動脈管閉鎖,先天性の肺血管床減少など。
呼吸障害や循環障害の悪化からPPHNになる場合:胎便吸引症候群,呼吸窮迫症候群,気胸,新生児仮死,先天性肺炎,敗血症など。
酸素化が不良となり,わずかな変化(体動,啼泣,処置)で急激にチアノーゼ増強,SpO2低下を認め,酸素需要が急速に高まる。酸素100%投与でも酸素化不良の場合にはPPHNを疑う。
動脈管レベルでの右左短絡となり,SpO2の上下肢差が5%以上乖離する。
聴診上,Ⅱ音の亢進を認め,時に三尖弁閉鎖不全による収縮期雑音を聴取する。
心エコー:先天性心疾患が否定され,卵円孔,動脈管レベルでの右左短絡を認めることで診断される。そのほか,肺高血圧の所見として三尖弁逆流,心室中隔の平坦化や左心室側への凸など。
酸素化の指標(重症度および治療の指標):Oxygenation Index(OI値)
PPHNではOI>15
(OI=FiO2×MAP×100/PaO2)
チアノーゼ性心疾患を鑑別する。特に総肺静脈還流異常症は多呼吸を伴うチアノーゼ性先天性心疾患であり,鑑別に苦慮するため,念頭に置く。
低酸素血症,高CO2血症,アシドーシスは肺血管抵抗を高め,体動,啼泣などは肺血管の攣縮を惹起し症状を増悪させる。このため,基礎疾患に対する治療を開始するとともに呼吸管理,循環管理,アシドーシスの補正,鎮静をまず行う。PPHNと診断された場合には一酸化窒素吸入療法(inhaled nitric oxide:iNO)を開始する。
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